これまでの連載で紹介してきたアルミニウム、ジュラルミン、マグネシウムに続き、BBSが新たに開発した4つ目の素材「FORTEGA(フォルテガ)」。軽さと高剛性を両立させたこの素材が、ホイールにどんなメリットをもたらすのか──開発者である村上氏の声も交えつつ、その魅力に迫る。

鍛造とは?

鍛造とは、金属に力を加えることで金属内部に鍛流線(たんりゅうせん)と呼ばれる鍛造組織を生み出す技術のこと。この工程により、金属内部の空隙がなくなり、強く粘り強い性質に金属が変化。主に自動車や航空機の部品や包丁や工具などの日用品など、強度が必要な製品によく用いられる。

BBSジャパンが世界に誇る鍛造工程はこちら

フォルテガとはどういう金属?

BBSジャパンが独自開発した新素材「FORTEGA(以下、フォルテガ)」。名称はイタリア語の“強い”を意味する「forte」と、合金を意味する「lega」を掛け合わせたものだ。従来のアルミニウム合金と比較して約10%の重量軽減を可能にし、形状に依存せずに剛性を高められる点が大きな特徴となっている。

補足:合金とは?
合金とは「元となる金属に別の元素を加えて性質を変えたもの。

「剛性」という個性

フォルテガは大きなくくりでは「アルミニウム合金」に分類されるが、その個性は明確で、一言でいえば「剛性」だ。形状設計に頼らずとも素材そのものが製品全体の剛性を底上げするため、アルミ系合金の中でも頭一つ抜けた存在であり、この特性こそが従来素材との大きな違いといえる。

補足:なぜ剛性が必要なの?
剛性は、同じ力を加えたときにどれだけ変形しにくいかを示す指標。ホイールには、壊れにくさ(強度)だけでなく、変形しにくさ(剛性)が求められる。とくに重量級の車では、ホイールがしなるとハンドリングが狙ったラインに乗らず、運転性能や乗り心地に影響してしまう。

「軽さ」へのポテンシャル

比重(密度)の面では、もっとも軽いのがマグネシウム、次いでアルミとフォルテガ、最後に超々ジュラルミンという順になる。フォルテガは剛性だけでなく、軽量化の可能性を秘めた素材として位置付けられる。

開発の出発点

フォルテガ開発のプロジェクトは約10年前、2015年頃からスタートした。きっかけは、クルマの高出力化によってメーカーから「剛性」が求められるようになったこと。その後、大型SUVの増加やEV化の兆しが加わり、ホイールに求められる性能の優先順位はさらに複雑化していく。

既存のアルミニウム合金やジュラルミン、マグネシウムは、それぞれに明確な特性を持ち、用途に応じて最適な選択がなされてきた。ただ、強度・軽さ・剛性という“トライアングル”をすべて高次元で成立させるには、既存の3素材では届かない領域もあった。そこを埋めるべく生まれたのが、新素材フォルテガだ。

開発の村上さんは、「形状に頼るだけでは限界がある。素材そのものに剛性を持たせることが必要でした」と語る。こうして、形状に依存せずに剛性を確保しつつ軽量化も可能な新素材、フォルテガの開発に着手したわけだ。

細部にまで息づくBBSのこだわり

フォルテガの基となる金属は、名前こそないものの金属記号としては存在するものだ。しかし、それを大型のホイールパーツとして成立させるのは別問題。開発当初は材料自体が粗削りな状態で、BBSの既存生産プロセスに合わせて特性を調整する必要があったという。この素材は高い剛性を持つため加工が難しく、変形に強いという特性を保ちながらデザインを形にするには、高度な技術が求められた。

ここで活きたのが、BBSがこれまで扱ってきたアルミニウム、ジュラルミン、マグネシウムといった素材で培った経験とノウハウだ。村上さんは「これまでの経験が役立った部分もあれば、新しい扉が開いた部分もあります。だからこそものづくりは面白い」と振り返る。

BBS開発陣は、ただ新素材を用いるだけでなく、BBSらしさをフォルテガで表現することにこだわった。これにより素材の特性とデザインの両立を実現。その完成度は、まさにBBSのクラフトマンシップの現れといえる。

ホイールにしたときのメリットは?

フォルテガの評価で注目すべきは剛性と、それに伴う軽量化のポテンシャルである。開発チームの評価は次のとおりだ。

  • 物性ベースでの剛性向上:約10%
    (同じ形状であれば剛性が約1割向上する)
  • 同じ剛性を維持した場合、約10%の軽量化が可能
    (同等の剛性なら部材を細くできるため軽くできる)
  • テスト車両では1本あたり7〜8kg前後の軽量化、4本で約30kgの軽量化を確認
    (従来製品が1台約8kgの軽量化に対し、素材特性として約30kgの軽量化を実現)
  • 実走・試乗の体感評価では約95%が変化を実感
画像: 4つの素材を剛性・密度・強度で比較。フォルテガは剛性に優れ、密度・強度も高い次元でバランスが取れている

4つの素材を剛性・密度・強度で比較。フォルテガは剛性に優れ、密度・強度も高い次元でバランスが取れている

画像: フォルテガ(右写真)と剛性を揃えてつくったアルミホイール

フォルテガ(右写真)と剛性を揃えてつくったアルミホイール

画像: こちらがフォルテガ製。同じ剛性でもスポークがより細くなっているのがわかる

こちらがフォルテガ製。同じ剛性でもスポークがより細くなっているのがわかる

村上さんは、こうした数値面と体感の両方を示すことで「必要な剛性を保ったまま軽くでき、その軽さが乗り味の違いにつながる」と説明。軽量化によるハンドリングの軽さやクルマの“ヒラヒラ感”の獲得は、とくに重量級車(大型SUVなど)での恩恵が大きいという。

BBSのフォルテガ採用ホイール

フォルテガ素材は、今年リリースされた鍛造1ピースホイール『FL』で初めて採用され、フラッグシップ素材としての位置付けで展開されている。今後は車種やニーズに応じて、採用領域をさらに広げていく予定だ。

FL(FORTEGA鍛造1ピースホイール)

画像: bbs-japan.co.jp
bbs-japan.co.jp

サイズ展開:21 inch
カラー展開:セレナイトブラウン(SNB)

村上さんは次のように述べる。

「この素材は特定のジャンルに限らず、剛性が求められるクルマであれば採用の幅は広がります。4つの素材が揃ったことで、クルマの変化に柔軟に対応できる準備が整いました」

フォルテガが示すもの

フォルテガは、BBSが「素材」というレイヤーから性能バランスを高めるために取り組んだ成果である。その根底には、ホイールという存在をどう捉えるかという開発者の視点がある。

「ホイールは単なる連結部品でも装飾品でもなく、構造部品でありながら装飾品でもあるという二面性を持つものです。性能と意匠を両立させることでクルマの付加価値を高められると考えています。強度・軽さ・剛性というトライアングルをいかに成立させるかが我々のチャレンジであり、フォルテガはその一つの答えです」

形状に依存せず剛性を確保できるこの素材は、BBSならではの細やかな意匠表現の幅をさらに広げる可能性を秘めている。大型車や高出力車における“乗り味の向上”という実利面と、BBSブランドが追求する“デザイン性”の両立を目指した結晶だと言えるだろう。

BBSホイールをもっと知りたい方はこちらもチェック!

ご紹介してきたとおり、BBSホイールにはフォルテガを含め4つの金属素材がある。アルミニウム、ジュラルミン、マグネシウムについても知りたい方は、以下の記事もぜひチェックしていただきたい。

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