富山から世界へ。
豊かな水資源と、そこから得られる豊富な電力によって、日本有数の工業圏として栄える北陸地方。なかでも富山県は日本海側屈指の工業県として知られ、数多くのメーカーが工場を構える製造拠点である。
BBSジャパンも同県に工場を持っており、富山から世界へ高品質なホイールを発信しつづけている。
ここからは、実際の製造工程を見ながら、BBSホイールができるまでをご紹介していきたいと思う。

BBSジャパンの高岡本社兼製造工場

新たな塗装工場として2020年に稼働を開始した四日市工場
金属の塊がホイールに。迫力の“鍛造”工程
ホイールの製造は高岡本社工場から始まる。
ここでは、ビレットと呼ばれる円筒形の鋳塊をホイールにする鍛造を行っている。

こちらがホイールの素材となるビレット
鍛造とは、金属に力を加えることで金属内部に鍛流線(たんりゅうせん)と呼ばれる鍛造組織を生み出す技術。これを行うと、金属内部の空隙がなくなり、その性質は強く粘り強いものに変化する。
時代劇などで刀鍛治が金属を叩いて日本刀を作っているのを見たことがあるだろう。あれが古くから伝わる鍛造製法であり、「鉄は熱いうちに打て」とは鍛造製法を表す言葉なのだ。
ホイールの場合は日本刀のように叩くのではなく、プレス機による圧縮だ。まずはビレットを4分の1の高さにまで圧縮していく。
1次〜3次鍛造でホイールを成形

製造するホイールに合わせて、5000〜12000tのプレス機で圧縮していく

製品に合わせて、その造形が彫られた「型」をプレス機に装着






1度の圧縮によってホイールができるわけではなく、大まかなホイールデザインを形作る1次鍛造、より造形を鮮明にする2次鍛造、製品に近い造形にまで整える3次鍛造と、3回の鍛造工程を経てホイールの形は整えられる。(製品によっては4次鍛造まである場合も)

3次鍛造まで行うことで、意匠面はほぼ製品同様の状態となる

鍛造を終えたあとは細部をしっかりと人の手と目で確認
スピニング〜脱膜
3次鍛造まで終えるとホイール表面のデザインはほぼ製品に近くなる。しかし今のままでは、タイヤを履かせるための幅がない。そこで行うのが、スピニングと呼ばれるホイールの引き伸ばし加工である。

金属組織を整え、デザインを成形した鍛造工程。しかし、このままではタイヤを履かせるための“幅”がない
スピニングマシンに鍛造で圧縮したホイールを固定し、回転させた3つのローラーを押し当て少しずつ伸ばしていく。こうして我々がよく知るホイールの形が作られていくわけだ。

グリーンの機械がスピニングマシン

写真中央はセットされたホイール。ここに回転した金属板を押し当て引き伸していく
スピニング作業を終えたホイールは、強度を高めるための熱処理(加熱・冷却)後に、規定の硬度に達しているかどうかの硬度測定が行われる。
測定に合格したホイールは、鍛造工程で塗布した離型剤を落とすため脱膜にかけられる。

加熱と冷却を行う“熱処理”。日本刀を熱して冷やす作業がまさにこれである

熱処理後は、のちに切削する部分を使って硬度測定を行う

鍛造工程にて、金型との固着防止に吹き付けられていた離型剤

脱膜マシンに入れられ離型剤を落としたホイール