2023年のF1世界選手権全レースが終了。レッドブルとマックス・フェルスタッペンがシーズンを席巻する格好となった。
フェルスタッペンは最終戦となったアブダビGPで勝利したことにより、シーズン19勝目。単年での最多勝記録更新となった。
これまでの年間最多勝の記録は、昨年フェルスタッペンが記録した15勝だった。それを4勝も上回る、圧倒的な強さだった。フェルスタッペン以前の記録は、2004年のミハエル・シューマッハー(当時フェラーリ)と2013年のセバスチャン・ベッテル(当時レッドブル)が持っていた13勝……それと比べれば、19勝がどれほど凄まじい記録だったかというのがよく分かる。
またレッドブルとしても、フェルスタッペンの19勝以外にチームメイトのセルジオ・ペレスが2勝を挙げており、合計21勝。これも、歴代最多勝記録を更新しただけでなく、不滅の記録として長年君臨してきた1988年のマクラーレン・ホンダの16戦15勝という最高勝率記録をも更新することになった。
この他にも連勝記録や獲得ポイント数など、レッドブルとフェルスタッペンにとってはまさに記録ずくめのシーズンとなった。いずれの記録も更新するのは実に難しいはずで、この2023年は今後長きにわたって語り継がれていくことだろう。
メルセデスとフェラーリのシーズン2位争い。最終戦ではルクレールの頭脳戦も
レッドブルの圧勝劇とは対照的に、ランキング2番手以下の争いは熾烈を極めた。
ランキング2番手を争ったのは、メルセデスとフェラーリである。
フェラーリは、シンガポールGPでカルロス・サインツJr.が、レッドブル以外で唯一となる勝利を記録し、レッドブルの全勝を阻止した。ちなみに、奇しくも1988年のマクラーレン・ホンダの全勝を阻止したのもフェラーリだった。
しかしフェラーリは安定性に欠け、取りこぼしも多かった。特に決勝レースではタイヤの性能劣化(デグラデーション)に苦しむこともしばしばあり、さらにノーポイントのレースも複数あり、獲得ポイントは伸びなかった。
一方でメルセデスは、優勝こそなかったものの、ルイス・ハミルトンが全戦でポイントを獲得し、ジョージ・ラッセルもコンスタントに入賞を重ねた。
最終戦を迎えた段階で、この2チームのポイント差は僅かに4。最終戦アブダビGPの結果次第では、ランキング2位の座がどちらに転んでもおかしくなかった。
このアブダビGPでフェラーリは、シャルル・ルクレールは終始上位を争ったものの、サインツJr.は予選から振るわず、入賞圏外となった。そんな中でもルクレールは、頭脳戦を展開。アブダビGPのレース終盤、ルクレールは2番手を走っていたが、3番手にいたペレスに5秒加算のペナルティが科されているのを活かして、メルセデスとの獲得ポイントの差を拡大させようとしたのだ。当時4番手にはメルセデスのラッセルがおり、最終的な順位で自身とラッセルの間にペレスを挟めば、ランキング上でも逆転できたのだ。
結果的にこの戦略はうまくいかず、ランキング上での逆転は叶わなかったが、300km/hというスピードでマシンを走らせながら、複雑な計算もまとめてしまう……F1ドライバーの能力の高さを示した一例だったと言えよう。
シーズン前半に躍進したアストンマーティンと、アップデート大成功のマクラーレン
ランキング4位争いも実に印象的だった。シーズン開幕当初、レッドブルに次ぐ2番手チームの座をほしいままにしていたのは、アストンマーティンだった。アストンマーティンは2022年のランキング7位だったが、今年一気に躍進。フェルナンド・アロンソの驚異的なドライビングもあり、表彰台の常連となった。
しかしシーズン後半になると、他チームのパフォーマンスが一気に向上。アストンマーティンは、シーズン前半のように表彰台を獲得することは難しくなっていった。
前述のフェラーリやメルセデスもパフォーマンスを上げたが、最も大きくパフォーマンスを引き上げたのは、間違いなくマクラーレンだった。
マクラーレンは今シーズン開幕直後に大苦戦。特に開幕戦では、ランド・ノリスが首位から2周遅れの17位、オスカー・ピアストリはリタイアだった。シーズン第9戦カナダGPまでの獲得ポイントは、合計17。しかもそのうち12ポイントは、大混乱となったオーストラリアGPでの幸運により掴んだポイントであり、当時はランキング最下位を争うチームのひとつだったのは間違いない。
しかしオーストリアGPでマシンにアップデートが投じられると、パフォーマンスが急激に向上。いきなり表彰台争いの常連に躍り出た。結局イギリスGP以降の13戦を見ると、ノリスが7回、ピアストリが2回の表彰台を獲得。ピアストリは、カタールGPのスプリントレースで優勝も手にしている。この好成績の連続によりアストンマーティンとの差を一気に詰め、最終的には大逆転。ランキング4位はマクラーレンのモノとなり、アストンマーティンは最終的にランキング5位に終わった。
世界を魅了した角田裕毅。ファステストラップと先頭走行を記録。来年の活躍に期待
シーズン終盤にパフォーマンスを大きく引き上げたチームとしては、アルファタウリのことも忘れてはならない。
アルファタウリも今季前半から中団にかけ、厳しい戦いを強いられた。角田裕毅は毎戦のように入賞争いをしながらも、なかなかポイントには手が届かなかった。チームメイトは当初、フォーミュラE王者経験者でもあるニック・デ・フリーズだったが、成績は低迷。1ポイントも獲得できず、更迭されることになった。後任を務めたのは、F1での優勝経験もあるダニエル・リカルドだったが、そのリカルドも3戦目のフリー走行で負傷し、日本のスーパーフォーミュラ参戦中のリアム・ローソンが代役を務めた。角田としては、チームメイトが次々に変わる、やりにくい日々だったはずだ。
そのアルファタウリもシンガポールGPに投入されたアップデートが成功し、ローソンが9位入賞。その後は、予選Q3に進出するなど、速さを身につけていった。ただ、戦略ミスなどが相次いだこともあり、なかなかポイントを積み重ねていくことはできなかった。
転機となったのは南北アメリカラウンド。その初戦アメリカGPでは、角田裕毅が8位に入賞したばかりか、後続との差をうまく活かしてレース終盤にタイヤを交換し、ファステストラップを記録(日本人として史上3人目!)した。
続くメキシコシティGPでは、戦線に復帰したリカルドが予選4位から決勝7位入賞。角田はPU交換のペナルティにより後方からのレースとなったが、素晴らしいペースを披露して追い上げを見せた。結果的には他車をオーバーテイクする際に接触してコースオフ。ポジションを下げ、入賞には手が届かなかった。
さらにサンパウロGPでは角田がスプリントレースで6位、決勝でも9位に入った。
これらの好成績により、当初は最下位だったランキングで一気に8番手まで浮上。ランキング7番手のウイリアムズと7ポイント差で最終戦アブダビGPに挑んだ。
そのアブダビGPでも角田が光る走りを見せ、予選6番手。決勝レースでも他とは戦略を変え、果敢に上位を狙った。レース中にはF1で初めて先頭を走るシーン(日本人として史上2人目!)もあるなど奮闘し、8位入賞。その活躍は世界から評価され、この日のドライバー・オブ・ザ・デイに選ばれた。
ランキング上でウイリアムズを抜くことはできなかったものの、アルファタウリと角田裕毅は、特にシーズン後半には印象的な活躍を見せた。
BBSのワンメイクホイール、改良版 ‟MK2” を投入!
今シーズンは確かに、レッドブルとフェルスタッペンのワンサイドゲームだった。しかしそれ以外にも、多くの見どころがあったシーズンだったと言えよう。
なおそんなF1の足元を支えているのが、BBSの鍛造マグネシウムホイール。オフィシャルサプライヤー2年目となった今シーズンも、チームやFIAとコミュニケーションを密にし、そのフィードバックを基に改良を続けてきた。
実は今シーズン途中には、耐久性と塗膜性能を向上させた改良型ホイール ‟MK2(マーク2)”を投入。概ね各チームから好評を得ている。このMK2ホイールは順次従来型から切り替えられており、来季は全チームともこのMK2を使うことになる。このMK2の投入により、来季各チームはより一層安定して臨めるはずだし、今シーズン以上に白熱したレース展開に貢献するはずだ。
来季のF1も、目が離せない。開幕は3月2日決勝のバーレーンGPである。そして鈴鹿サーキットでの日本GPの開催時期は春となり、4月7日に決勝レースが行われる予定だ。