BMWにハマり37年、7台を乗り継ぐ
住まいのある千葉市内から車で約1時間。埼玉県新座市のタイヤ販売店「保崎タイヤ商会ヴィーヴォ」に、加藤久幸さんの姿があった。
「私のBMWの足回りは、すべて保崎始社長に任せています」
ヴィーヴォは、タイヤ販売からカスタムまで手がけるショップで、BBSホイールやミシュランタイヤを多く扱っている。加藤さんは36年にわたりこの店に通い続けているが、今では愛車のカスタムについても、ほとんど口を出さないという。
「私がこうしたいと言っても、だいたい『ノー』って言われますから。それはクルマによくないって(笑)」
たとえ客の要望でも、クルマに負担がかかるカスタムは行わないという保崎さんに、加藤さんは絶大な信頼を寄せている。

加藤さんが絶大な信頼を寄せる、保崎タイヤ商会ヴィーヴォの保崎始社長(右)

ヴィーヴォの店内にはBΒSのホイールが並ぶ
加藤さんのBMW歴は37年。5年前から乗っている530i Mスポーツが7台目となる。もともとBMWに強いこだわりがあったわけではないが、買い替えのタイミングで、クルマ好きの奥様から「次はBMWにしたら」と勧められ、その気になった。1988年、加藤さん30代半ばの頃のことだ。
「当時、ホンダのバイクが好きという理由で、クルマもホンダ車に乗っていたんです。BMWもバイクを出しているので、同じような気持ちで選びました」
そこからBMWにハマった。乗り心地、ステータス、走る楽しさ。それまで乗っていた愛車とは明らかに違った。やがて、クルマをカスタムする楽しさにも目覚める。車高を下げ、足回りは新座のヴィーヴォで、マフラーは横浜の3Dデザインで……と、買い替えるたびに手を加えるようになった。
「人と同じクルマに乗るのがイヤなんです。自分のオリジナルと呼べるクルマに乗っていたい」

マフラーはBMWのカスタムパーツで知られる3Dデザイン製。加藤さんこだわりのひとつ

スムーズな吹け上がりと上質なフィーリングを極めたマフラー。ドライビングが楽しくなる

青く光るメーター類も加藤さんの自慢だ
「これで最後」から3台乗り換える
加藤さんは1978年に大学を卒業し、薬剤師資格を取得して製薬会社に入社、営業職に配属された。同時にホンダ・アコードを購入し、自らのクルマで全国の薬局をまわる日々が始まった。月に4000km、年間5万km以上走っていたという。
「勤めていたのはドイツの会社の日本法人だったのですが、本社に行った際、社用車の走行距離は70万kmを超えていました。アウトバーンのあるドイツでは、1日400〜500kmの移動は当たり前でしたね」
さすがに70万kmには及ばないが、加藤さんも営業時代にアコードを毎年のように買い替え、5台を乗り継いだという。

「気に入ったBMWを見つけると欲しくなってしまう」と語る加藤さん
走行距離はひとつの目安ではあるが、加藤さんにとってクルマを買い替えるタイミングは、“気に入ったBMWを見つけたとき”。そうなると、家族に反対されても、どうしても欲しくなる。
「『これで最後だから』を、もう3回も言っています(笑)」
去年まで働いていたので、自分の小遣いはクルマのローンに充てていたそう。今は食指が動かず、530i Mスポーツを5年乗り続けている。
加藤さんは60歳まで製薬会社に勤めた後、薬局出店支援を行う公益財団法人に転職し、昨年退職。現在は個人で離島や僻地の薬局出店アドバイザーとして活躍している。
「一昨日は与那国島、昨日は青森に行っていました。今はクルマに乗っている時間よりも、空港の駐車場に置いてある時間の方が長いかもしれません」
いつかは履きたいBBSは「誇り」
加藤さんとBBSの出会いは、1989年に初めて購入したBMW 320i Mテクニックがきっかけだった。購入時には、すでにBBSのメッシュホイールが装着されていたという。
「BBSのことはワシマイヤー時代から知っていて、いつかは履いてみたいと思っていました。でも高価なので、なかなか手が出せなかったんです」
その後しばらくは純正ホイールで我慢していたが、2012年、6台目のBMW 523i ハイラインで初めてBBS RE-Vを購入。念願を叶えた。
「ヴィーヴォの保崎社長に『ホイールはBBSじゃないと』ってずっと言われていまして。ようやく決断しました。年齢的にもBBSを選ぶ良いタイミングかなと」
現在乗っている530i Mスポーツに乗り替えた際には、RE-Vを履き継ごうとしたがPCDが合わず、新たにRE-Vを購入しなおしたそう。
加藤さんにとって、BBSホイールは「誇り」だ。
「F1で使われているくらいですから、クオリティは間違いない。『真円』のホイールに乗っていることを意識することもありますよ。体感ではわかりませんけどね(笑)。BBSはクルマ好きなら誰もが憧れる、一生の内にいつかは手に入れたい高級ブランドだと思います」
信号待ちなどで車が並ぶと、つい隣のホイールをチェックしてしまう。
「それで優越感に浸っていますが、たまに若い人がBBSを履いていると、ちょっと悔しい気持ちになりますね(笑)」

RE-Vのシンプルなデザインがお気に入り
そんな憧れのホイールだからこそ、傷をつけないよう細心の注意を払って運転している。
「以前は高速の料金所でよく擦ってしまったのですが、ETCになってそれはなくなりました。今注意しているのは羽田空港などの料金ゲートやコインパーキングです。大回りして入れるようにしています(笑)」
今のRE-Vは、5年間一度も傷をつけていないそうだ。
次の夢はガレージ付きの家とカブリオレ
71歳となり高齢者講習も受講した加藤さんだが、自身の運転技術には、まだ十分に自信を持っていると語る。乗る頻度こそ減ったものの、BMWへの愛着は変わらない。
「今の夢は、屋根付きのガレージを作ってBMWを置き、家の中から眺めながらウイスキーを飲むことです」
現在はマンション暮らしのため実現は難しいが、点検などで新座を訪れるたび、ヴィーヴォの保崎社長や、保崎さんを紹介してくれた自動車販売会社の社長と、クルマ談義を楽しんでいる。

年齢に関係なく、夢を持ち続ける加藤さん。まだまだ実現したいことがたくさんある
そしてもう一つの夢も。
「ドイツでアウトバーンを走っていたとき、ベンツのオープンカーが200km/hくらいで追い越していったんです。乗っていたのは白髪の老夫婦。それを見て、『いいなあ、自分も最後に買うのはカブリオレかな』と思いましたね」
この夢も、家族の大反対でまだ実現できていない。

(取材協力)保崎タイヤ商会ヴィーヴォ
所在地 | 埼玉県新座市野火止8-5-15 |
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TEL | 048-479-4748 |
営業時間 | 10:00〜19:30 |
定休日 | 水曜日・祭日 |