レッドブル今年も圧倒……のはずがまさかの展開に
2024年のF1前半戦は、まさに大混戦の様相を呈した。シーズン後半も、この混戦模様に拍車がかかることだろう。
シーズン開幕当初は、レッドブルが圧倒的な強さを見せていた。今年から春開催となった第4戦日本GPを終えた段階で3回の1-2フィニッシュを記録し、第5戦中国GPでもマックス・フェルスタッペンが勝利。負けた第3戦オーストラリアGPはマシントラブルによるリタイアに終わっただけであり、”レッドブル強し”という印象は昨年以上に高まった。
しかし徐々にその様相が変わり始める。第6戦マイアミGPではマクラーレンのランド・ノリスがF1初優勝を手にすると、第8戦モナコGPでは地元レースとなったシャルル・ルクレール(フェラーリ)が勝利。その後、第11戦オーストリアGPではジョージ・ラッセル、第12戦イギリスGPではルイス・ハミルトンと、メルセデスが連勝した。第13戦ハンガリーGPではマクラーレンのもうひとり、オスカー・ピアストリがやはり初優勝を遂げ、前半戦最後のベルギーGPではハミルトンがシーズン2勝目……合計7人ものウイナーが誕生する、まさに群雄割拠のシーズンとなったのだ。
7人ものドライバーが勝利を収めたのは、2012年以来のこと。この2012年は開幕してからの7戦全てで勝者が異なるという稀に見る混戦のシーズンで、最終的にはこの年8人が勝利を手にした。今季開幕時のレッドブルの安定性を見れば、それに次ぐ数の勝者が登場するとは、誰にも想像できなかったのではないだろうか。
それだけ急激に、レッドブル以外のチームが力をつけたということ。とはいえ今季のフェルスタッペンは14戦中7勝。ドライバーズランキングでは2番手のノリスに78ポイントの差をつけており、ここ4戦勝利を逃しているとはいえ、今季のチャンピオン最有力であることには変わりない。
対抗馬はマクラーレンか?それともメルセデス?
フェルスタッペンにとっては、ライバルがひとりだけではないということが後押しとなるかもしれない。というのも、現時点で最速だと目されているのはマクラーレンだが、レッドブル以外で最も多くの勝利を手にしたのは実はメルセデスであり、ここまでに3勝。しかも前半戦の終盤4戦中3勝を挙げるという上昇ぶりだった。
最速はマクラーレンなのに勝つのはメルセデス……つまりこの2チームは、星を潰しあっているということだ。相対的なパフォーマンスを落としつつあるレッドブルとしては、歓迎すべき状況であろう。
ただコンストラクターズタイトルでは、レッドブルには不安が残る。フェルスタッペンこそ安定してポイントを獲得し続けているものの、チームメイトのセルジオ・ペレスは取りこぼしが目立ち、前半戦を終えた段階でランキング7番手。この夏休みの間に更迭されるという噂も出ているが、チームに残ることができたのならば、奮起することが求められるのは必至だろう。
8月末のオランダGPから始まる後半戦も、やはり大混戦となるのか? あるいはいずれかのチームが一歩抜け出して席巻することになるのか……現時点ではまったく読めない。
評価高騰の角田裕毅。将来に向けた転機に
F1に参戦する唯一の日本人ドライバーである角田裕毅の活躍も、今季前半の見どころのひとつであった。
前述のとおり今季はレッドブル、マクラーレン、メルセデス、フェラーリがトップ4チームを占め、それにアストンマーティンが続くという勢力図だった。つまりこの5チーム以外がポイントを手にするのは実に難しい……そんな中でも角田は開幕直後から安定して入賞を重ね、合計22ポイントを獲得。ハースのニコ・ヒュルケンベルグと同ポイントで、トップ5チーム以外の最上位につけている。
その活躍により、前述の通り厳しい戦いが続くペレスの後任候補のひとりとして名前が挙がった。また、ライバルチームから移籍のオファーがあったという話もある。すぐにレッドブルに昇格することができなかったとしても、トップチームとて無視できない……角田がそんなF1ドライバーに成長した姿を見せた前半戦だったと言える。
どのチームのマシンを走らせるとしても、角田の2024年シーズン後半戦には注目すべきであろう。
なお今シーズンはBBSがF1のワンメイクホイールサプライヤーになって3年目。昨年途中から投入が進められていた改良版のホイール”MK2”が全チームに行き渡った最初のシーズンでもある。このMK2ホイールは側面からの耐衝撃性が従来品と比べて2倍となっており、安定したレース運営に寄与してきた。