まさに圧倒的強さ! フェルスタッペンがシーズン前半に10勝
中東はバーレーンで開幕した2023年シーズンのF1では、レッドブルが圧倒的な強さを発揮。夏休み前最後の1戦となった第13戦ベルギーGPまで、全てのレースで勝利を収めた。第6戦として予定されていたエミリア・ロマーニャGPは豪雨被害により開催中止となったが、開幕から12連勝。1988年のマクラーレン・ホンダが持っていた開幕11連勝という記録を上回る、新記録が樹立されることになった。
このレッドブルにパワーユニット(エンジン+ハイブリッドシステム)を供給しているのはホンダのレース専門子会社であるホンダ・レーシング(HRC)。つまりホンダが持っていた連勝記録を、ホンダが更新したということになる。
特に強さを発揮しているのは、マックス・フェルスタッペン。フェルスタッペンは2021年、2022年と連続してチャンピオンを獲得してきたドライバーであり、タイトル3連覇に向けて視界は良好。シーズン前半だけで10勝を挙げ、もはや敵なしという状況である。しかも第5戦マイアミGPから8連勝中であり、アルベルト・アスカリとセバスチャン・ベッテルが持つ9連勝という最長連勝記録にあと1勝と迫っている。
今の勢いを考えれば、今後も連勝が続くと考える方が自然。奇しくも、夏休み明け初戦はフェルスタッペンの母国オランダGPであり、そのボルテージは最高潮に高まることになろう。
まさに新記録づくめのシーズンとなりつつある2023年。もしレッドブルが勢いそのままにシーズン全勝を達成すれば、史上初の快挙となり、注目が集まっている。
躍進したアストンマーティン。“ベテラン”アロンソが大活躍
一方、2番手チームの争いは大混戦となっている。
シーズン開幕当初、この2番手のポジションにいたのはアストンマーティンだった。アストンマーティンは昨年のランキングでは7位だったチーム。それが一気に2番手にのし上がったのだ。
アストンマーティンは、カナダの大富豪であるローレンス・ストロールが所有権を握り、その豊富な資金力によって設備投資を実施。今年巨大な本拠地が完成したばかり。2026年からは、F1に正式復帰を果たすホンダとタッグを組むことが決まっている。ドライバーは、オーナーの息子であるランス・ストロールと、今年42歳となった大ベテランのフェルナンド・アロンソである。
特にアロンソは表彰台の常連となり、前半12戦中6戦で表彰台を獲得。2005〜2006年に2年連続でチャンピオンを獲得した時のように、イキイキと躍動している。ドライバーズランキングではレッドブルのふたりに次ぐランキング3番手である。
ただそんなアストンマーティンの勢いも徐々に削がれ、やはりと言うべきかかつての最強チームが勢いを取り戻し始めた。メルセデスである。
レースごとに変わる2番手チーム……後半戦に抜け出すのはどこ?
F1マシンは、ドライバーが座るコクピットの後方にエンジンが置かれ、その両脇には冷却装置など様々な機器を収める‟サイドポンツーン”が存在するのが常だ。しかしメルセデスは2022年のマシンからこのサイドポンツーンを排除。‟ゼロポッド”と呼ばれるマシンコンセプトを採用した。だがこれは効果を発揮せず、シーズンを通して低迷。終盤に1勝を挙げたが、それが精一杯という状況だった。
2023年に向けてはこのゼロポッドを諦めると見られていたものの、引き続きこのデザインを採用。しかしやはりというべきか、シーズン序盤は低迷し、レッドブルのみならず前出のアストンマーティンの後塵を拝する形となった。
結局、今季8戦目となったスペインGPで、ついにゼロポッドを捨てることを決断。他チームと同じようなデザインのサイドポンツーンを手にした。すると戦闘力が向上。ルイス・ハミルトンが表彰台の常連になり、ハンガリーGPでは僅差ながらポールポジションを獲得するにまで至った。これで、メルセデスがレッドブルを追う立場になるだろう……多くの人がそう思ったはずだが、そうはいかないところが混沌とした今シーズンを物語っている。
第10戦オーストリアGPで一躍戦闘力を上げてきたのがマクラーレンだ。マクラーレンのランド・ノリスはこのオーストリアGPで4位に入賞すると、続くイギリスGPとハンガリーGPで連続して2位。ベルギーGPのF1スプリントでも、新人オスカー・ピアストリが2位に入った。
実はマクラーレンは、開幕戦では最も遅かったチームのひとつ。その後も下位に低迷し、第9戦カナダGPを終えた段階で、わずか17ポイントしか獲得できていなかった。しかしオーストリアGPからの4戦でなんと86ポイントを獲得。一気にレッドブルに次ぐ2番手のチームに浮上してきたのだ。
またフェラーリも、シャルル・ルクレールが4回の表彰台を獲得するなど、着実にポイントを積み重ねている。
アストンマーティン、メルセデス、マクラーレン、フェラーリの序列が目まぐるしく変わる2番手チーム争い。シーズン後半も熾烈な争いが続くのは間違いないだろう。
3年目の角田裕毅。低調なマシンでも3度入賞……関係者の評価高まる
日本人の角田裕毅が所属するアルファタウリは、今シーズン大苦戦を強いられている。現時点では、最も遅いチームと言っても過言ではなく、当初角田のチームメイトを務めていたニック・デ・フリーズは、第11戦イギリスGPを最後に更迭されることになった。デ・フリーズも、FIA F2や電気自動車のF1とも言われるフォーミュラEでチャンピオンを獲得した才能あふれるドライバーであるが、それでも乗りこなすのは難しいマシンだった。後任には、かつて同チームに在籍していたベテランであるダニエル・リカルドが復帰したが、厳しい状況にあるのは変わらない。
そんな中でも角田は奮闘。マシンのパフォーマンスは低いものの、定期的に入賞争いを繰り広げており、評価を上げている。夏休み前最後となったベルギーGPでも10位入賞を果たし、これで今季の獲得ポイントは3となった。チームのランキングは最下位であるものの、このレースでは復調の兆しも見せており、シーズン後半の活躍に期待がかかる。
そんな激戦の足元を支えるBBSの鍛造ホイール。ここまで大きなトラブルは報告されていないが、各チームからは様々なフィードバックが寄せられている。その貴重な情報は、今後の改良に繋げていくことになる。