こよなくクルマを愛するオーナーに、愛車へのこだわりについて聞くシリーズ。第9回は、福島県いわき市・小名浜港で働くTさん(34歳)。衝撃のセダン車デビューから始まったクルマ遍歴、そしてBBSホイールについて伺った。

カスタマイズはシンプル・イズ・ベスト

黒く輝くアルファードから降りてきたTさんは、休日の30代らしいラフな装い。しかし、愛車から漂うのは高級感と貫禄だった。

「“シンプル・イズ・ベスト”が私のこだわりです」とTさん。アルファードの高級感を損なわないように、外観は“やり過ぎないカスタマイズ”を心がけているそうだ。

今の愛車は高級感あふれるアルファード

目指したのは、手を加えているように見えない自然な仕上がり。冠婚葬祭にもそのまま乗って行けるクルマである。車高とホイール以外は大きく変えず、等身大のクルマライフを楽しんでいる。

いわき市で生まれ育ったTさんは、クルマ好きの両親の影響で幼い頃からクルマに強い関心を持っていた。小学校低学年のころには、走るクルマを見て車種名を言い当てるほど。

「親はよくクルマ雑誌を買ってきたり、カタログを持って帰ってきたので、気に入ったクルマの写真を切り抜いて部屋の壁に貼っていました」

Tさんが生まれたころに父親が乗っていたのはエスティマだった。Tさんは、そのエスティマがとくにお気に入りだったという。

もらったエスティマでカスタムデビュー

18歳になってすぐに免許を取り、高校卒業後、群馬県館林市で就職した。

「本当は市内で職を探していたのですが見つけられず、館林の工場に就職して寮生活を送ることになったんですが……」

母親が乗っていたワゴンRを譲ってもらい、館林に引っ越したのはいいが、会社はわずか1か月で退職。すぐにいわき市に戻ってきた。

「就職を決めたとき、周囲に“本当に群馬でいいのか”といわれたんです。自分もいわきが好きだったので、これでいいのかなと実は悩んでいて……」

つまりホームシックだ。

『BBS歴は浅く、ただ履いているだけなのに本当にいいんですか?』と謙遜しつつインタビューにのぞむTさん。しかし、BBSを手にした喜びは隠せない様子

それから半年ほどアルバイト生活をして、9月からは親戚の紹介で今の職場に再就職した。このときに乗っていたのは、父親に譲ってもらったエスティマ。給料をもらうようになってからは、このエスティマのカスタマイズに勤しんだ。

父親から譲り受けたエスティマ

「車高を下げ、ホイールを履き替え、マフラーやオーディオ、モニターなど、給料が入るたびに、次はどこを変えようかと楽しんでいました」

このとき気に入ったホイールがあったが、それはBBSではなかった。「まだ若過ぎてBBSのよさがわからなかったんです」と、Tさんは笑う。

エスティマは、カスタマイズの楽しさを教えてくれた一台だった。だが、そんな愛車にも限界は訪れる。

お気に入りのクラウンとの出会いと別れ

エスティマが故障。しかも重症だという。
そこでTさんは新たにクルマを購入することを決意。初めて自分で買ったのは、父親が昔乗っていたのと同じクラウンで、モデルはクラウン アスリートを選んだ。20歳になる少し前のことだ。

「この車種で一番高いグレードでフルオプション、シートは本革でサンルーフも装備。同世代の仲間にも乗っている人はいなかったので、ちょっと自慢のクルマでした」

価格は約190万円。20歳前の会社員には思い切った支出だ。納車されたのは、Tさんが「忘れもしない」という2011年3月3日の木曜日。週末に地元のクルマ仲間に自慢した翌週の3月11日、東日本大震災で、いわき市も壊滅的な被害を受ける。

Tさんや家族は無事に避難できたが、自慢のクラウンは津波に流されてしまった。所有したのはわずか8日間。あまりにも早い愛車との別れだ。

「クルマは流されてボディーはボロボロでしたが、中は無傷で荷物を取り出せたのは不幸中の幸いでした。やはりクラウンはすごいと思いましたね」

その後、義理の兄からオデッセイを譲ってもらい、しばらく乗っていたが、やはりクラウンへの思いは消えない。いろいろ妥協して2台のクラウンを乗り継ぎ、結婚、子どもの誕生を機に、2020年にアルファードを新車で購入した。

納車8日目に震災で流されたクラウンアスリート(写真左)と、二台目のクラウンアスリート(写真右)

「それまで乗るならセダンだと思っていましたが、チャイルドシートをつけたら荷物が積めないといった問題もあり、乗り換えました。もちろん、納車後すぐにタイヤ店に直行して車高調とホイール交換を行いましたよ(笑)」

三台目のクラウン。名残惜しさを残しつつ、次の愛車へ

暮らしに寄り添う存在として選んだアルファード

BBSの実物に出会い、オーラを目の当たりに

TさんがBBSホイールに目を向けるようになったのはアルファードを購入したころ。

「それまでBBSホイールの実物を見る機会はほとんどありませんでした。周りに着けている人もいなければ、地元のショップにも置いていなかったので」

たまたま仕事関係で知り合った人のレクサスLSにBBSが装着されており、間近で見て驚いたという。

「品があるというか、オーラを放っているというか……もう一目惚れでしたね」

これまで履いてきたホイールに飽きていたこともあり、街であまり見かけず、仲間のクルマとも被らないBBSに惹かれた。しかしすぐに買えるものではなく、「いつかはBBS」がTさんの目標になった。

一台目のアルファードは、新型の登場に合わせて2024年1月に手放し、二台目を購入。納車は6月で、その間にBBS購入に関する家族会議が行われた。純正ホイールという選択肢は初めからなく、他社のホイールとBBS LMの見積もりを取り寄せ検討。

BBSは他社の2倍の価格だったが、奥さんの「他社にして後悔するならBBSにすれば」という後押しもあり、購入を決めた。今までのホイールが売却時に二束三文だったことに比べ、BBSは資産価値が下がりにくく、価値のある買い物だと思えたことも決め手になったという。

見られる喜びを味わえるBBSの価値

BBSを履いて感じたのは、ハンドル操作が軽くなったこと。Tさんは車高調でも乗り心地重視のため、これは重要なポイントだ。見た目も品があり塗装が美しい。他に履いている人が少ないため、街中でも注目される。

「BBSを知っている人は知っているので、知り合いやガソリンスタンドの店員さんに『いくらしたの?』と聞かれます」

唯一の難点は、ホイールを傷つけないように気を遣うこと。自分だけでなく周囲も気を遣う。ディーラーや洗車に出す際などは、半分冗談で「ノーマルに戻してから出してほしい」と言われることもあるそうだ。一度傷をつけたことがあったが、ホイール自体は歪まず、修理に出したら「他のホイールなら歪んでいますよ」と言われたとか。

「クルマ好きにとって、街で乗っていて見られたり驚かれたりする喜びは、価格以上の価値があります。今は、BBSホイールを眺めながらお酒が飲めるほど、BBS以外考えられません」

高級車に高級ホイール。シンプル・イズ・ベストなカスタムが、クルマの価値をさらに際立たせている。

いくつもの季節を越えてきた小名浜の港。Tさんは、静かにその海を見つめる

【私のBBS遍歴】ユーザーごとに違う、ホイールへの想い