「誰に褒めてもらいたいですか?」から始まるホイール選び
黒川店長が接客でもっとも大切にしているのは、商品の説明ではなく、お客様自身を知ることだ。タイヤ交換の相談であれば、今困っていることや予算、普段の使い方を一つひとつ聞いていく。
一方、ホイール選びでは、もう一歩踏み込んだ質問を投げかける。
「誰に褒めてもらいたいですか?」
少し意外にも思える質問だが、そこには黒川店長ならではの考え方がある。
「自分が格好いいと思えればいい人もいれば、彼女やご家族、会社の先輩や友人に『いいね』と言ってもらいたい人もいます。私が格好いいと思って提案しても、家に帰って『それダサくない?』って言われたら、その人にとっては失敗になってしまうんです」
好みは人それぞれ。同じBBSホイールでも、選ぶモデルやサイズによって印象は大きく変わる。だからこそ、「どのホイールが人気か」ではなく、「その人にとっての正解」を探すことを大切にしている。

「ホイールは徹底的に好みを探りますね」
その姿勢は、カスタム経験が少ないお客様への対応にも表れている。
近年はSNSや動画サイトなどで多くの情報を得てから来店する人も多い。しかし、頭の中では理想のイメージができていても、実際の車両には装着できなかったり、思い描いていた仕上がりにならなかったりするケースも少なくない。
そんな時も、一方的に「できません」と伝えるのではなく、なぜ難しいのか、どうすれば理想に近づけるのかを一緒に考えていく。
「夢を持って来てくれるので、それを一つひとつ形にしていく感じですね」
場合によっては、マッチングに詳しいスタッフへバトンを渡すこともある。
「私は『乗るとこんな感じですよ』『見た目はこう変わりますよ』という体験を交えてお話しすることが多いんです。でも、お客様によっては、マッチングやサイズを数値で説明したほうが納得しやすいこともあります。だから、そういう時は得意なスタッフに代わって説明してもらいます」
一人ですべてを抱え込むのではなく、お客様にとって一番伝わる方法を選ぶ。それもまた、このお店らしい接客だ。
長く愛される理由は、「色あせないこと」
数あるホイールブランドの中で、BBSにどんな魅力を感じているのか。そう尋ねると、黒川店長は一台の車を思い浮かべた。
「20年以上前になるんですが、NSXにRG-Rを装着したことがあるんです」
当時人気だったホイールは数多くある。しかし、その多くは新しいモデルが登場すると、どうしても時代を感じさせる存在になっていく。
一方で、BBSは違うという。
「時間が経っても格好よさが変わらないんですよ。たとえ新しいホイールが出ても、『これは昔のモデルだね』ってならない。BBSホイールって色あせないんです。昔の輸入車が今見ても格好いいように、BBSも年代に関係なく『これはこれでいい』って思えるんですよね」

実際に座って確かめられるレカロシートの展示

BBSをはじめ、さまざまなホイールが並ぶ店内展示コーナー

思わず考えたくなるBBSのカタログ展示。その理由は、実際に見て、触れて、確かめてほしい
店内にはレカロシートの展示コーナーも設けられている。黒川店長によれば、「車好きの間では、レカロ、BBS、ビルシュタインを憧れのブランドとして挙げる人も多い」という。時代が変わっても支持され続けるブランドには、流行だけでは語れない価値がある。
だからこそ、一度選んだオーナーが長く愛用し続ける。流行に左右されないデザインは、BBSならではの価値の一つ。
もっとも、黒川店長が語るBBSの魅力は、デザインだけにとどまらない。印象的だったと話すのが、装着した瞬間に違いを体感したというお客様の反応だ。とくに最近増えているハイブリッドカーやEV車は車重が重く、ホイール交換による変化も分かりやすいという。
「お店を出た瞬間に電話が掛かってくることもあります。『全然違う!』って。道路に毛布を一枚敷いたような感じ、って言われることもありますね」
数値では表しきれない走りの変化を、お客様自身が体感する。その瞬間に立ち会ってきたこともまた、黒川店長がBBSに魅力を感じ続ける理由の一つなのだ。
「まずは相談してみよう」と思ってもらえる場所へ
「BBSって気になるけど、何がいいのか分からない。そんな方が『とりあえず聞いてみよう』と思えるお店になれたらうれしいですね」
ホイールは決して安い買い物ではない。だからこそ、不安や疑問を抱えたまま購入してほしくない。実際に話を聞き、自分の車には何が合うのか、どんな違いがあるのかを納得した上で選んでほしいと黒川店長は考えている。

「私たちはBBSの窓口というか、足がかりになれればいいなと思っています」
プロショップと一口に言っても、そのかたちはさまざまだ。
特定のジャンルを極めた専門店もあれば、豊富な知識や経験を武器に、愛好家同士が深い話を交わす店もある。それもまた、プロショップの一つのかたちだろう。
一方で、黒川店長が目指しているのは、もう少し間口の広いプロショップである。
車に詳しくなくてもいい。ホイールのことが分からなくてもいい。ただ「気になっている」「一度相談してみたい」という気持ちがあれば十分。その人がどんな車に乗り、どんな使い方をしていて、何を求めているのか。一人ひとりの思いや不安に寄り添いながら、一緒に答えを探していく。
誰もが安心して相談できる店づくりも、初心者の目線に立った接客も、専門用語を並べるのではなく分かりやすい言葉で伝える工夫も、すべては「相談しやすい店」であるための取り組みだ。
「まずはここで話を聞いてみよう」
そう思ってもらえる存在でありたい。それが、黒川店長が考えるプロショップのかたちなのだ。
常連客が語る、この店の魅力
撮影当日、来店していた常連客の太田さんにも話を聞くことができた。2023年のオープン当初から通い続ける一人で、現在はスバル WRX S4にBBS RE-V7を装着している。そんな太田さんに同店の魅力を尋ねると、笑顔でこう語ってくれた。
「めんどくさい相談でも喜んで聞いてくれるんですよ。『こうしたい』『ああしたい』っていう話も親身になって聞いてくれるし、ダメなものはちゃんとダメって言ってくれる。その線引きがしっかりしているので安心できます」


太田さんが選んだRE-V7、実は愛車の左右で異なるカラーを組み合わせている。


「ダイヤモンドブラックにするか、ブラックにするか本当に悩んで……。結局、どっちも履きたくて左右で色を変えました。3カ月くらい悩みましたね」
その決断に、黒川店長は「男の決断でした」と笑う。
しかし、話はそれで終わらない。実は購入前に勧められたブリヂストン限定カラーであったマットグレイが、今でも気になっているという。
「店に来るたびに展示品を見て、『やっぱりあれもいいな……』って思うんです(笑)」
BBSを手に入れたからといって、愛着やこだわりがそこで落ち着くわけではない。
「やっぱりあっちもいいな」と、お店に来るたびに楽しそうに悩む。そんなオーナーの深いこだわりや“悩み”に、どこまでも付き合ってくれる姿勢こそ、この店が愛される理由なのだろう。
| 所在地 | 静岡県沼津市西沢田277-1 |
|---|---|
| TEL | 055-925-4567 |
| 営業時間 | 10:00〜19:00 |
| 定休日 | 毎週水曜日 |
| 公式サイト | https://www.mr-tireman.jp/shop/numazu-bp/ |
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