E88ディスク+LMリムを組み合わせ、ストリート用にリファインを敢行。
BBSのホイールには常にモータースポーツの熱い血が流れている。それは、ル・マン24時間耐久レースをルーツに持つ名作「LM」が、30年以上にわたり愛され続けている事実を見れば明らかだ。止まることのない進化の歩み。2026年3月にBBSジャパンから放たれる新作「RT88」もまた、過酷なコンペティションシーンの最前線から生まれたホイールである。
しかし、このRT88はこれまでのモデルとは一線を画している。そのバックボーンにあるのは、雲の上のトップカテゴリーではなく、自らの手でマシンを操るクラブマンレーサーたちの生々しい熱量なのだ。草レースでの戦いに寄り添うレーシングホイールの凄みや研ぎ澄まされた佇まいを応用した本作は、ストリートにおける新たな価値観を切り拓く意欲作と言える。
RT88誕生のきっかけは、約10年前のアメリカに遡る。当時、BBSモータースポーツ(現・BBSジャパン100%子会社)が手がけた競技用3ピースホイール「E88」が、現地のポルシェやBMWオーナーの間で大きなムーブメントを巻き起こしていた。その熱狂を目の当たりにしたBBSアメリカは、ひとつの画期的なアイデアを提案する。「E88のディスクに、信頼性の高いLMのリムを組み合わせれば、完璧なロードカー用ホイールができるのではないか」。この発想こそが、今回発表されたRT88の原点となった。
名だたるOEMに採用される品質の高さ。そして、F1をはじめとするモータースポーツの第一線で鍛え上げられたパフォーマンス。この揺るぎない実績こそが、BBSホイールが多くのファンを魅了してやまない理由だ。もちろん、そうしたトップカテゴリーで採用されるのはモノブロックだ。コンマ1秒を削るためには、絶対的な「軽さ」が不可欠だからである。
だが、組み立て式の3ピースホイールにも独自の存在価値がある。アウターリムを曲げてしまっても、そこだけを交換すれば再び使用できる。リム幅を変更したい場合は、リムの組み合わせを変更することで対応可能だ。コストを抑えつつ本格的な走りを楽しみたいクラブマンレーサーにとって、この優れた修復性と拡張性は、軽さという絶対的な正義すら凌駕するメリットとなる。週末のサーキットでしのぎを削る、彼らのタフなスピリットを、ロードカーへと注ぎ込むこと。それこそが、RT88というプロジェクトの狙いなのである。
こうした背景のストーリーが、RT88の大きな魅力であることは間違いない。しかしそれがBBSのホイールであるならば、デザインや誕生秘話といった要素だけでは、エンスージアストを納得させることはできないのである。
妥協なきBBSの名を冠する以上、そのクオリティとパフォーマンスが愛好家たちの期待を凌駕するレベルにあることは言うまでもない。その本気度は、これが単なる「E88とLMの組み合わせ」ではないことに表れている。
まずは、リムへのアプローチだ。2ピースのLM用リムが選ばれた理由は、競技用3ピースが持つメンテナンス性や拡張性よりも、ストリートでの揺るぎない信頼性を確保するところにある。3ピースはリムの個別交換が可能だが、気密性を保つシーリングを要する。また、E88のインナーリムフランジが先端をカールさせただけであるのに対し、LMのリムは、ソリッド形状となっている。なにより厳格な衝撃・回転曲げ試験をクリアした、確かな安全性がそこにはあるのだ。

LMから転用した段付きリム。路面からの強い衝撃や、コーナリング時の強烈な横Gに対しても ホイールが歪みにくい
そしてディスクもE88のデザインを踏襲しながら、LM用リムと締結するために、ピアスボルトの径と穴数、位置を再設計した。それに伴い、装飾も兼ねるはずのピアスボルトのヘッドをあえて裏側に隠している。この引き算のアプローチによって、外周部の造形が一段と際立って見えるのだ。

ピアスボルトをディスクの裏からねじ込むことで、ヘッドを表に見せないすっきりとしたデザインとなっている。
パフォーマンス面に目を向けると、最新の鍛造モノブロックと比較して数値上の重量で劣るのは事実である。しかし、RT88の真価はそこではない。
BBSジャパン 開発本部長の村上貴志氏は、次のように断言する。
「ロードカー用のホイールとしてはオーバースペックです」
重量と引き換えに手に入れたのは、レーシングスペックの絶大な強度だ。実際にディスクの断面を見れば、他のモデルとは比較にならないほどの分厚さに驚かされるはずだ。BBSが誇る軽量・高剛性を前提としつつ、アマチュアレーサーたちが限界域で求めるタフネスを、ロードカー用として完璧にリファインしている。

隣り合うスポークをY字状につなげた「クロススポーク」デザインを採用。サイドは軽量化のためにえぐられているのがわかる。
さらに、2ピース構造の恩恵として、豊富なサイズ展開とカラーバリエーションも挙げられる。発売時点で、ポルシェやBMWといった欧州のハイパフォーマンスモデルを中心に約50品番が用意される。また、ディスクカラーはミッドナイトゴールド、モータースポーツゴールド、ホワイトゴールド、ブリリアントシルバーの全4色、リムはシルバーダイヤカットとブラックブライトダイヤカットの全2色をそろえる。コーディネートの楽しみも持ち合わせているのである。
2026年、BBSはスクーデリア・フェラーリと共にF1という頂点を戦う。その一方で、クラブマンレーサーや、ストリートでのスタイルを追求するオーナーたちの声に応え、これほどまでに堅牢で美しいホイールを送り出してきた意義は極めて大きい。RT88は、サーキットの情熱を公道へ持ち込むための、最も理にかなった解答である。

2026年1月の東京オートサロンでは、992型911GT3 RSに装着したモディファイスタディが公開された

モデル名の「RT」とは、ロード&トラックを意味しており、まさにサーキットを戦うロードモデルであるポルシェRSモデルにふさわしい。

前20×10.0J IS45 CL/後21×13.0J IS31 CLである。パイロットスポーツカップ2が組み合わされていた
| PRICE LIST | |
| 20×10.0J IS45 CL | ¥415,800 |
| 21×13.0J IS31 CL | ¥459,800 |
2026年3月30日発売の『MOTORIST VOL.8』に、「クラブマンレーサーの熱狂を宿した意欲作、BBSが公道に放つ圧倒的スペック。」という見出しで掲載された記事を再構成したものです。
※掲載内容は発売当時のものです。
写真=中島仁菜 文=MOTORIST編集部


