BBSがつないでくれたお客様との縁。55年続くプロショップ・沼田タイヤの“人とのつながり”
熱い思いを語ってくれたお客様の声に続いて、ここからは沼田タイヤの代表・蔵本さんにバトンをつなぐ。ショップとしてのスタイルやこだわりについては、以前の記事でじっくり伺った。
沼田タイヤの原動力はこちらの記事でチェック!
今回は、お客様とのつながりを軸に、沼田タイヤが歩んできた長い歴史を振り返る。
なぜ選ばれ続けてきたのか、どう“常連さん”との信頼を築いてきたのか。その歩みの中には、BBSとの関係や、広島の街とともに重ねてきた時間が確かに息づいている。
イベントが映すのは、移りゆく時代とお客様との距離感
試写会やチューニングカーの合同展示など、沼田タイヤはこれまで多彩なイベントを開催してきた。そこには、「クルマ好きとどう関わるか」「お客様との距離をどう測るか」という明確な目的があったという。単なる集客手段ではなく、“変わる時代と変わらない情熱”を見つめ直す場として、イベントは重要な役割を果たしてきたのだ。
最初の試みは、まだ前身の店舗時代。別に運営していた『タイヤプラザ』と協力し、広島の大型ショッピングモール・アルパークのドライブインシアターで、映画『スペシャリスト』の試写会を開催した。「“タイヤのスペシャリスト”にかけてね」と蔵本さんは笑う。当時としては画期的な企画で、ラジオでの告知も行われ、50〜60台の車が集まった。
その後も時代に合わせてイベントは変化。2000年頃には、広島市内の産業会館で「BBS」をテーマにチューニングカー主体の展示会を実施。コンパニオンも登場し、当時の盛り上がりを象徴するような空気に包まれた。

今回のイベントは沼田タイヤの“集大成”。これまで支えてくれたお客様とBBSへの感謝が込められている
「イベントは、ただ人を集めるためのものではない。お客様との距離を測るにはとてもいいんです」
蔵本さんのこの言葉には、販売店としての原点がにじむ。モノを売るだけでなく、カーライフそのものを共有したい──。情報が飽和する現代にあっても、沼田タイヤが変わらず大切にしているのは、人と人とのつながりだ。今回開催された55周年記念イベントにも、そんな“変わらぬ想い”が込められている。
“人と人との関係”を大事にしてきた沼田タイヤ。では、情報が溢れるいま、BBSはどう選ばれているのか。
変わる情報、変わらない信頼──BBS選びのいま
BBSを求めて来店するお客様の姿は、ここ数十年で大きく変わったという。かつては限られたカタログ情報を頼りに、「どこで見られるのか」「どこで買えるのか」を探す時代だった。
「昔は、今みたいにネットなんて無いので、カタログを見るのも一苦労でしたからね。そのなかでうちを選んでくれていたんです」と蔵本さん。BBSの現物を見られる数少ない場所として、沼田タイヤはユーザーにとって貴重な存在だった。

一方、現在ではネット上に情報が溢れている。多くのユーザーは、ホイールの種類やマッチングを事前にしっかり調べ、購入する商品の「8〜9割」を決めた状態で来店するのだという。
「すでにたくさんの情報を手にしているにも関わらず、それでもお店に足を運んでくれるのは、最後のひと押しを求めているからだと思います。現物を見て、色の印象が変わったり、気持ちが動いたり。最終的に“自分が納得して買える”ということが何より大事で、そこだけは昔も今も変わらないんです」
情報過多な時代だからこそ、“信頼できる目”で背中を押してくれる存在が必要とされている。それが、長年BBSを扱い続けてきたプロショップ・沼田タイヤの変わらぬ役割だ。
価格より“納得”を選ぶ人へ。沼田タイヤの信頼と提案力
ともあれ、BBSを扱うお店は沼田タイヤだけではない。なぜ同店がここまで多くのお客様に選ばれるのだろうか。
現代のユーザーは、ネット通販やオークションなど多様な情報源を駆使し、価格比較も当然のように行う。だが、沼田タイヤでは価格競争に振り回されることなく、自店の価格を明確に示すことを重視しているという。
「うちの価格が他より1万円、2万円高くても買ってくれるお客様がいます。それは信頼関係やアフターケア、そして専門的な相談に乗れるプロショップの強みがあるからこそだと思っています」

沼田タイヤの店内。写真は2021年にプロショップ企画第一弾で訪れたときのもの
市場に出回る商品は新品から中古、そして中には偽物まで出回るのが実情だ。そうした混沌とした状況の中で、「どれを信じていいかわからない」と迷うユーザーが最後に頼るのが、経験と実績に裏打ちされたプロショップだ。その信頼を支えているのは、顧客の課題に的確に応える提案力に他ならない。
沼田タイヤが強みとするのも、まさにこの提案力である。同店では複数のタイヤブランド(6ブランド)を取り扱い、価格や性能、目的に応じたトータルな提案を行なっている。安価な廉価品しか扱わない店舗とは異なり、顧客のニーズに合わせて幅広く選べるため、「何のためにBBSを装着するのか」という本質を見失わない。

実際にタイヤを装着して展示することで、イメージしやすくしているのも同店舗の特徴だ
「特定のブランドに偏らず、あくまでお客様の用途に合った製品を提案するのが自分たちの役割です。ただ、信頼できる基準として自然とミシュランがメインになってはいますけど」と蔵本さん。
膨大な選択肢の中から“納得できる一品”を選ぶ。その“選ぶ難しさ”と真摯に向き合ってきたからこそ、沼田タイヤは今もなお、選ばれ続けている。
変わらない価値を、次の世代にも。
これから沼田タイヤとして実現したいことを尋ねると、「難しい質問だね(笑)。それは社長が答えたほうがいいな」と笑う松井店長。蔵本さんは少し考え、話し始めた。

阿吽の呼吸で沼田タイヤを支える蔵本社長(左)と松井店長(右)
「これからといっても、劇的に何かを変えるつもりはありません。沼田タイヤは、これまでずっと“良いものを、格好良いと思えるものを”届けてきました。その姿勢は今後も変わりません。BBSはまさに、そうした商品を象徴する存在。これからも、その価値を大切にしていきたいですね」
最後の質問は、“未来のBBSファン”に向けての思い。その問いかけに、ふたりはこう答えてくれた。
「やっぱり最初に“クルマが好き”って気持ちがないと、始まらないですよね。うちでもよくあるのが、親御さんがクルマ好きで、その影響で子どもも興味を持ち、BBSに憧れるようになる、というケース。そう考えると、親世代の存在ってやっぱり大きいと思います」と松井店長。
これを受けて蔵本さんは続ける。
「実際、うちのお客さんは親子二代、三代にわたって来てくださる方が多いんです。“タイヤとBBSといえば沼田”っていう信頼が、自然と子どもたちにも受け継がれている。そのなかで、“BBSは格好いい”“BBSは特別だ”という価値観も、家庭の中で伝わっていくようなところがあるんですよ。
BBSは、一度手にすれば“これ以上はない”と思えるホイールです。そういう“一生もの”の価値を、これからの世代にも知ってもらえたら嬉しいです」
これまで二人三脚で歩んできた蔵本社長と松井店長。多くのお客様の信頼を支えに、これからも変わらぬ熱意で沼田タイヤの未来を築いていく