王道からハズす嗜好は父親の影響
「レア車に乗りたいんです」
坂田さんが乗ってきたのはBMW M4クーペ EDITION HERITAGE。2020年に発売され、日本には30台しかない限定車である。その足元にはゴールドカラーのBBS RE-V7だ。
「人気モデルとは違う、独自の魅力を持つクルマが好きですね。クルマの好みに関しては父の影響を受けているかもしれません」
坂田さんが“父親のクルマ”として最初に意識したのはフォードのレーザーだった。「レーザーを選ぶなら、ベース車であるマツダのファミリアでも良くないか?」とふと思ったという。
次に購入したのは日産プリメーラ(P10)。これも「スカイラインやローレルじゃダメなの?」と感じた。欧州車の雰囲気が好みの父親が行き着いたのが、実際の欧州車であるフォルクスワーゲンだ。しかし、ここでも王道のゴルフを外し、ヴェントを選ぶ。
絶妙に王道を外してきた父親のクルマ選び。しかし、今となっては坂田さん自身も、その影響を強く感じている。
「私がはじめに買ったクルマもフォルクスワーゲンのポロとボーラで、王道のゴルフには行きませんでした」
その後アウディなどを経てBMWにたどり着いたが、エントリーモデルの3シリーズではなく、135クーぺに。次もM2と、王道の車種には乗らず、2ドアのMT車という選択を続けてきた。
「結婚して子どもができたからワンボックスやミニバンに──という発想には至らず、2ドアのクーペに乗り続けてきました。リアシートにベッド型のチャイルドシートが装着できたから問題ないだろうと。私も妻もどこかマヒしていたんでしょうね(笑)」
BMWはトランクがベビーカーを積めるぐらい広いため、まったく不便を感じなかったそうだ。
MT車のこだわりを捨ててまで選んだ「ラグナ・セカ・ブルー」
坂田さんはこれまでMT車にこだわってきた。車種を選ぶポイントもMT車があるかどうか。
しかし3年前に買った限定モデルのBMW M4クーペ EDITION HERITAGEはM DCTドライブロジック、つまりAT車だ。MT車を選ばなかったのには理由がある。
それは車体カラーに惹かれたから。限定30台のうち15台のみに採用された「ラグナ・セカ・ブルー」は、2世代前のM3の標準カラーでもあり、坂田さんはたいそう気に入っていた。
「ソリッドで少し緑がかったブルーが印象に残っていたんです。DCT車ではあるけど、これはどうしても欲しい! と思いました」
しかし、高い。
欲しいからといって気軽に買える代物ではない。坂田さんが逡巡していると、次のモデルの登場が近づいてきたこともあり、割引が提示されたという。それでも決して安い買い物ではなかったが、この機会を逃すわけにはいかないと決断し、購入に踏み切った。
「結局オプションを付けたら元の価格に戻りましたけど」と坂田さんは笑う。
このM4のラグナ・セカ・ブルーに合わせたのが、ゴールドのBBS RE-V7だ。落ち着いた青にゴールドのホイールが見事にマッチしている。
「ゴールドだけど上品で嫌味のない色合いが好きですね。BBSのホイールはデザインも含めて主張しすぎないので、好みの色に合わせやすいと思います」
一貫してきたMT車へのこだわりを捨てても欲しかったそのカラーコーディネート。坂田さんは今のクルマに大いに満足しており、次に乗りたいクルマは思い浮かばないという。
「でも、国内限定40台で販売されるBMW M4 CSの抽選に当たったら悩みますけどね(笑)」
BBSはクルマを引き立たせてくる名バイプレーヤー
坂田さんが初めてBBSホイールを履かせたのはワーゲン・ボーラでRG-Rだった。現BBSジャパンがまだワシマイヤー社の時代である。
BBSホイールとの出合いはさらに昔。父親のワーゲン・ヴェントに標準で装着されていたホイールがBBSだった。標準装備ではあるものの、BBSのホイールキャップがついており、坂田青年はホイール=BBSを強く意識するようになった。
「クルマ雑誌を読むようになる頃には、ワシマイヤー(現BBSジャパン)の広告を見るたび、自分もクルマを持ったらBBSを履くぞと思っていたんです」
ワーゲン・ボーラの後に乗ったクルマは標準装備のホイールであったが、BMW時代に入ると、BBS熱が加速! BMWは適合するBBSホイールが豊富で選びがいがあると坂田さんは言う。
「選んだRE-V7は、ラグジュアリーとスポーティさのバランスが絶妙で、自分のスタイルにピッタリでした」
ホイールを替えにプロショップに行くようになると、他にもいろいろ変えたくなるのは、クルマ好きの性だろう。
サスペンションなど足回りから始まり、今のM4はボンネット、フロントグリル、マフラー、リアウイングなど全体的に手を加えている。理想の姿をイメージして、それに合うパーツを探し、取り寄せる── M4は現時点で坂田さんが思い描く完成形といえそうだ。
流行りに流されず、残すべき古いモデルは残してほしい
最後に、坂田さんが感じるBBSホイールの魅力を聞いた。
「鍛造ホイールとしての軽さはもちろんですが、BBSは塗装の品質が非常に高いと感じています。同じシルバーでも上質さがあり、ゴールドカラーも派手すぎず上品です。デザインも他とは一線を画しつつ、過度に主張しすぎることもない。まさにクルマを引き立ててくれる名バイプレイヤーです」
ワシマイヤー時代からBBSホイールを見てきた坂田さん。現在のBBSブランドの印象はどうだろうか。
「SUV用のモデルを出したりと、時代に応じて変えるべきところは変えつつ、古き良きものもしっかりと残してくれている印象です。オーセンティックでありながら、唯一無二のブランドだと感じますね」
「これからも流行りを追いかけるのではなく、変わらない部分をしっかり残して欲しい」と坂田さん。
普段、クルマに乗るのは主に買い物やドライブ。自宅のある練馬から関越道や中央道に乗り、日帰りで軽井沢や八ヶ岳に出かけることが多いという。
ドライブには18歳になる息子さんも付き合ってくれるが、いまはクルマより鉄道に興味があるようで、BMWとBBSの組み合わせの妙をどこまで理解してもらえているか、少し気掛かりな坂田さんであった。