がんばって買ったクルマだからホイールはBBS
村島さんの自宅にあるガレージは、縦に2台置けるスペースがあった。その奥から出てきたフォルクスワーゲン ゴルフRは、新車のようにきれいで、大切に乗っているのがよくわかる。
「このクルマに乗るのは月に多くても1〜2回。雨の日にはガレージから出しません。汚れるのがイヤなので。定期的に出張洗車に来てもらっています」
走行距離は5年で1万km。普段乗りはヴェルファイア、通勤にはもっぱら軽トラを使っており、ゴルフRに乗るのは、友人らとのツーリングなどで“現実逃避”するときだけだという。
このゴルフRを新車で購入したのが5年前。やっとBBSのホイールを着けられたという。最初に購入したホイールはLMのダイヤモンドブラック。
「高価なホイールなのでなかなか手が出なかったのですが、ゴルフRはがんばって買ったクルマなので、どうしてもホイールはBBSを履かせたかったんです」
念願叶ったBBS LMは、デザインはもちろん、その“軽さ”にも驚いたと、村島さんはいう。
「スタートがまったく違いました。ドライブに入れたときからサーっと軽やかに走る感じ。2ピースホイールでもこんなに実感できるんだと驚きました」
がんばって買ったBBSホイールだが、ただ1点だけ不満があった。履いてみるとオフセットが少し凹んでいて、しっくりこないこと。
2023年1月に行った東京オートサロンのBBSブースで、LMの期間限定販売色が出ると知った。それがLMセレナイトブラウン×ブラックダイヤカットだ。
行きつけのショップにすぐに連絡し、発売されたら取り寄せてくれるように頼んだ。それがいま装着しているホイールだ。悩みだったオフセットもピッタリ。
「クルマのドレスアップが趣味ですが、このワーゲンゴルフRで大きく変えたのはホイールとマフラーだけ。外装はもう手を加えるところがないくらい満足しています」
父親の愛車を見てメッシュホイールファンに
村島さんのクルマ好きのルーツは幼少期までさかのぼる。
「父もクルマ好きで、物心ついたときには家にスカイラインGT-RのR32型があったんです。それがカッコよかった。私がクルマを好きになった原点ですね」
父親は飯坂で4代続く医者で、GT-Rは30年以上前に新車で購入したという。その愛車が純正パーツとして履いていたのがBBSのホイールだった。
「BBSのメーカー名は知らなくても、メッシュのホイールがカッコいいと、ずっと思っていました。幼いころからメッシュのホイール=BBSと刷り込まれています」
父親のGT-Rは、村島さんの家の隣にある実家の車庫に今もある。ゴルフRと同じようにピカピカで、もちろん現役だ。
長い間、GT-RとBBSホイールを見続けてきたので、村島さんが免許を取るころには愛車にはBBSを装着するというイメージができあがっていた。
しかし、現実にはそうはいかない。
村島さんの車遍歴は、免許をとってすぐに乗ったプリウスに始まる。9年ほど乗り、改良を重ねた。最終的には「そんなクルマで仕事に来るな」と怒られる姿になったが、BBSホイールには手が届かず、似たメッシュのホイールを履いていたという。その後通勤用に買ったアルトをはさみ、5年前に納車したフォルクスワーゲン ゴルフRで、ついにBBSホイールを履いた。
ゴルフRは、BBSホイールにふさわしいクルマということで選んだと感じることもあるそうだ。
カスタムのこだわりはライトチューン。大きく変えたのはホイールとマフラーだが、ブレーキキャリパーやローターなど、細かい部分にも手を入れている。
カスタムテーマは、“父親に借りている車”。純正部品を活かし、他とはちょっと違うクルマにする。
「ゴルフ自体は大衆車なのでいろいろなパーツが輸入されていて、安いものもたくさんあるのですが、そこはこだわったメーカーのものを選んでいます。安っぽいパーツは付けたくない。ほとんどの人は気が付かないかもしれませんが、わかっている人にすごいと思ってもらえればいいんです」
ゴルフRを18年後の息子に渡したい
村島さんは、昨年結婚した妻の麻友美さん、今年生まれたばかりの長男の颯泰(そうた)君との3人暮らし。
実家の隣、祖父母が遺してくれた家をリフォームして住み始めたばかりという村島さんの自宅は、ミニカーやクルマの模型であふれていた。
「これも趣味です。車種よりBBSのメッシュホイールにこだわって集めています」
実際のクルマも1分の1スケールのプラモデルのような感覚なのかもしれない、と村島さんはいう。今はとにかくクルマに囲まれた生活を満喫している。
麻友美さんとの出会いにもクルマが関わっているという。
麻友美さんが当時乗っていた愛車にオーバーフェンダーを組もうとして、それを手掛けたのが村島さんの通っているショップだった。その縁で知り合い、同じ趣味を持つ同士で意気投合して結婚。
聞けば、麻友美さんの両親もクルマが好きで、父親はレースに出ていたこともあるそうだ。愛車にはBBSホイールを履かせていて、麻友美さんもそれを見て育った。いわばBBSの英才教育を受けた者同士というわけである。
──麻友美さんのいいところは?
「月に1度しか乗らないゴルフRを持っていても文句をいわないところですね」
──高価なホイールの買い替えも麻友美さんの理解があったから?
「あっ、このホイールのことは内緒です(笑)」
子どもが生まれても、ゴルフRはファミリーカーとして使うつもりはない、と村島さんはいう。
「このクルマはきれいに乗り続けて、ゆくゆくは息子に渡したいんです」
颯泰くんが免許を取れる18年後、ピカピカの車体とホイールでゴルフRを移譲するつもりだ。自身が父親のGT-Rを見て育ったように、息子もゴルフRとBBSのホイールを見て、クルマ好きになってくれればいいと思っている。
BBSは日本が世界に誇る“ブランド”
「BBSはフォルクスワーゲンに負けない、日本が世界に誇る“ブランド”だと思っています。走っているときの優越感が違います」
最近もディーラーに「BBSを履いていて、変わったキャリパーを付けたワーゲンゴルフを見かけたけど知らないか?」という問い合わせがあったそうだ。
月に1度しか走らないのに、すごい注目度だ。そのうち見かけたらいいことがあるという都市伝説も生まれそう。
今後も、いいクルマを買ったらBBSホイールを履くと断言する村島さん。父親が持っているGT-Rが日本のスーパーカーだったので、自身もスーパーカーを持つことへの憧れがある。次に買うならポルシェ、最終的にはフェラーリを買いたいと、夫婦で話している。