無限とは?
「無限 MUGEN」は、ホンダ車の性能を引き出すアフターパーツメーカー。レーシングエンジンやチューニングパーツの設計から実走まで自社で行い、その技術とデータは同社の製品開発に活用。ホンダのレース活動を支える重要なパートナーでもあり、ホンダと共に「挑戦」のスピリットを共有するメーカーとして、多くのホンダユーザーに愛されている。
さらなる高みへ。 共同プロジェクトで完成した『FR10』
2022年9月2日、ホンダは新型シビック TYPE R(FL5型)を発表。翌年4月にはドイツ・ニュルブルクリンク北コースにて、FFモデル最速の7分44秒881というラップタイムを記録し、名実共に最速のFF車となった。
「TYPE R」の挑戦の歴史にまた一つ偉業が加えられたわけだが、挑戦のスピリットに終わりはない。ホンダが出したひとつの結果を受け、無限はさらなる高みを目指すべく、シビック TYPE R のカスタムパーツとして『無限 CIVIC TYPE R "Group A"』を開発。
この取り組みの中で、BBSと無限はタッグを組み、シビック TYPE R専用ホイールを完成させた。それが今回ご紹介する『FR10』だ。
ここからは、この共同開発プロジェクトを担当した無限(株式会社M-TEC)の開発担当・中出 駿貴(なかで・しゅんき)さんと、BBSジャパンの且田 裕一(かつだ・ゆういち)さんのインタビューをお届け。『FR10』の開発秘話をぜひご覧いただきたい。
軽さを追求した専用ホイールの開発
2023年1月・東京オートサロン2023の会場に、1台のデモカーが展示された。無限ブースに飾られた“それ”は「CIVIC TYPE R MUGEN Concept(のちの無限 CIVIC TYPE R "Group A"・“Group B”)」として発表され、無限がFL5型シビックのカスタムパーツ開発を手掛けることを強くアピール。
その車両の足元には、無限のロゴ入りセンターキャップを装着したBBS鍛造ホイール「RI-D」の姿が。これにユーザーも注目し、会場では多くの質問が寄せられたという。
「お客様に聞かれたとき『 BBSさんと一緒にやりたいと思っています』と回答していたのですが、実はオートサロンのときは“思い”が先行しての発表でして……厳密に共同開発の話が締結していたわけでありませんでした(笑)」と中出さん。
「2023年のオートサロンの少し前から一緒に何かやりましょう!という話は無限さんとしていました。でもまさかあの場で発表するとは(笑)。イベント会場の控え室で緊急の打ち合わせです(苦笑)」とはBBSスタッフの且田さんだ。
ともあれ、その後綿密な話し合いを経て、シビック TYPE Rの専用ホイールを共同開発することでまとまった本プロジェクト。構想段階ではどのようなイメージだったのだろうか?
純正とは違う道へ。BBS × 無限の答え
「そもそもシビックTYPE Rは、純正の状態で完成度の高いクルマです。このクルマをベースに開発をする以上、無限としても覚悟を持って臨まないといけません。ホイールも間違いのないものを用意したい。だからこそBBSさんの力をお借りしたかったんです」
構想段階では、軽さと剛性を両立したホイールというイメージがあったというが、既存のBBSホイールをそのまま使うという選択肢はなかったのだろうか?
「無限ブランドの製品作りの根幹には“オリジナル”の精神があります。やはり無限のラインナップに製品を加える以上は、そこに無限ブランドとしての意志を入れたかったんです」
開発開始前に製品の特性やデザインの方向性を協議。そこで無限の開発陣は、これから作るホイールに『より軽量であること』を求めた。
「走った際のフィーリングとしてユーザーさんがもっとも体感しやすいのは重量の違いだろうと。もちろん剛性あっての“軽量”ではありますが、一番実感しやすいところを少しでも伸ばしたいというのが我々無限の要望でした」
要望を受けたBBSは、まずはホイールの意匠を決定したという。
「BBSの特徴であるクロススポークは活かしつつ、『無限 CIVIC TYPE R』に装着した際、より見栄えがよくなるようにと考えました。結果、スポークを長めにとることで、ホイールが大きく見えるように設計。Group Aのパーツが装着された中でも、足元の存在感をしっかりと発揮できるようにしました」
「次に取り組んだのは剛性のバランスです。これは無限さんの要望である『軽さ』にも直結してきます。TYPE Rの純正ホイールはリバースリム構造となっていて、ホイールイン側の剛性が高くなっているんですね。BBSとしても同じ方向性のテストホイールを用意し、無限のドライバーである野尻智紀選手に試していただきました。しかし、無限さんが手がけたクルマのバランスとしてはそうではなかったんです」
剛性違いとしてリムの厚みが異なる3種類のホイールを用意したBBS。実際にサーキットで走ったときにドライバーはどう感じるか。アクセルを踏み込めるのか、それとも躊躇してしまうのか。
数値からは測れない人間の感覚をテスト走行でみたところ、野尻選手が示したのは、均一に剛性を持たせた、“もっとも軽量なモデル”だった。
純正とは異なる方向にシフトした両陣営。そうして完成した19インチ鍛造アルミホイール『FR10』は、純正ホイールに対して約-10kg/4本の軽量化を実現。無限とBBSが考える、シビック TYPE R専用ホイールがここに完成した。