北米の人気レースであるNASCARで初の日本人優勝者となった尾形明紀さん。BBSのホイール供給が始まったNASCARの魅力やドライバーが求めるNASCAR用ホイールについてインタビューを実施した。(Text/Photo:土田康弘)

北米の人気レースカテゴリーNASCARで日本人が初優勝

画像: 北米の人気レースカテゴリーNASCARで日本人が初優勝

日本ではまだまだ馴染みの少ない自動車レースだが、北米では圧倒的な人気を誇るのがNASCAR(ナスカー)。そんなNASCARのホイールはかつてはスタンダードなスチールホイール(5穴、15インチ)をかたくなに守り続けてきたが、2022年からはBBSがワンメイクで供給するアルミホイール(センターロック、18インチ)が使用されている(トップカテゴリーのNASCARカップ・シリーズが対象)。

BBSのホイールのワンメイク供給が始まったことで日本でもNASCARの人気が盛り上がることが予想されるが、2022年は絶好のタイミングでNACAR史上初の日本人ウイナーが登場している、それが今回登場する尾形明紀さんだ。初優勝に加えて年間5勝を挙げ、NASCARにおける実力の高さを示すシーズンとなった尾形さんが帰国したタイミングでトークショーを開催したので、NASCARの魅力や現場の空気感を知るためのインタビューを申し込んだ。

NASCARカップ・シリーズを頂点とした全米独自のレース

その前に、NASCARの基本情報をおさらいしておこう。NASCARはNational Association for Stock Car Auto Racing(全米自動車競争協会)の略称で、禁酒法時代(1920年~1933年)に密造酒を運んだ南部のドライバーが禁酒法が廃止された後にクルマをドライブする腕自慢をしたのがルーツとされている。

現在、NASCARにはNASCARカップ・シリーズを頂点として、エクスフィニティ・シリーズ、キャンピングワールド トラックシリーズの3つの主要シリーズに加え、各地にローカルレースも数多い。アメリカ全土にはオーバルトラックは数千あると言われ、週末ともなると各地でローカルレースが開催される大人気の競技なのだ。

使用するマシンはストックカーと呼ばれ、街中を走るクルマを模したデザインを踏襲している。かつては街乗り車を改造していた時代もあったが、現在では専用のパイプフレームを使ったシャーシに各社のクルマを再現したボディを被せるスタイルの純レーシングマシンとなっている。トップカテゴリーのNASCARカップ・シリーズ以外は今もスチールホイールを使っているのも特徴だ。

NASCARドライバーを目指すことになった尾形さんの経歴

今回インタビューした尾形さんは10代の頃には日本でモトクロスに熱中し、当時の国際B級までステップアップし本格的なレーシングライダーを目指していた。しかしケガのためバイクは諦め、その後はミジェットカーレースなどを経て、2003年からはNASCARへの参戦を開始、そして2022年についに念願のNASCAR初優勝を飾ったのだった。

そんな尾形さんにNASCARの魅力についてうかがった。

画像: 会場に展示されていた2022年仕様のミニカー

会場に展示されていた2022年仕様のミニカー

画像: ホイールやステッカーもかっこいい

ホイールやステッカーもかっこいい

「最初のNASCARとの出会いは18歳の頃に見たミニカーでした。すごくカッコいいレーシングカーだと思ったんですが、当時はNASCARのレースについては詳しくは知りませんでした。その頃、偶然テレビでNASCARを扱った番組が放送されたんです。日本のレースには無い迫力、ぶつかい合いもある激しさ、アメリカらしいレースだなと思って急激に興味を持つようになりました」

映像で見たNASCARの迫力や激しさに魅了された尾形さんは、まもなくして自分の目でNASCARを見たくなってアメリカに渡ることになる。

「最初はデイトナに行ったんです。すると観客が15万人以上も来てるんです、しかもインフィールドにはキャンプしてる客もいました。日本のレースとはまったく雰囲気も違っていてすごく開放的で、みんながレースを楽しんでいるのが伝わってきました」

しかしここまでは尾形さんにとってNASCARは憧れの存在だった。しかし2度目の渡米で自らが参戦するモードへと切り替わる。

「日本に帰ってからいろいろとNASACARのことを調べました。するとNASCARの街として有名なのがノースカロライナ州のシャーロットだとわかったんです。それで2年後にもう一度本場のNASCARを見に行くことにしたんです。するとまさに街全体がNASCAR、ローカルレースもたくさんあって、見るレースだけでは無く参加するレースでもあることを体感したんです。“ローカルレースから参戦しよう”と決意したのはその時だったんです」

参戦するドライバーから見たNASCARの魅力

NASCARの聖地に足を踏み入れることでNASCARに魅了された尾形さんは参戦を開始、さらにはアメリカに移住して本格的にNASCARドライバーへとキャリアを積み重ねていくことになる。尾形さんそこまで駆り立てるNASCARの魅力とは何なのだろう?

「NASCARはエンターテインメント性が高いのがひとつの魅力だと思います。協会もファンをすごく大切にしていますし、ファンも“ファンのプロフェッショナル”としてレースをサポートするという雰囲気なんです。ただ単にレースを見に来ている観客と言うより観客を含めてみんながレースに参加している感覚が最大の魅力です」

観客とレースを結びつけている協会のファンへのサポートにはどんなものがあるのだろう?

「一番は情報の提供です。ドライバーの情報やレース情報などを細かく公開するんです。お気に入りのドライバーの動向などをレース前から楽しむことができるんです。レース中もドライバーとピットを結ぶ無線通話も公開されていて、ラジオを介して誰もが聞くことができます。レース中の作戦なども観客が逐一知ることができるので一緒にレースに参加している感覚になるんです」

オーバールトラックで争われるレースは、慣れていない日本の観客にとっては退屈なのでは? と思ってしまうかも知れない。“ただ楕円のコースをグルグル回っているだけなんじゃ無い?”といった先入観があるのは事実だろう。しかし実はレースにはいくつもの見どころがあるという。ここも尾形さんに解説してもらった。

「レーシングマシン同士のぶつかい合いがある激しいレースは他では見られないものでしょう。その迫力を体感して欲しいですね。それとドライバーを知るとすごく楽しくなるのがNASCARなんです。前のレースではそのドライバーはこうだった、さらに同じレースに出場する他のドライバーとの関係性も含めて、さまざまな事前情報が流れてくるんです。ドライバーそれぞれにドラマがあって、応援する選手を決めて、それらの情報を知った上でレースを見るとまったく違う見方ができます。さらにルールを知ることも楽しむためのポイントです。ピットインのタイミングや作戦などもルールを知った上で見ると意味がわかってくるんです。これも“自分もレースに参加している”と思わせてくれる一因になります」

NASCARに投入されたBBSのアルミホイール

画像: NASCARに投入されたBBSのアルミホイール

そんなNASCARに2022年シーズンからBBSのアルミホイールが採用されている。ただし採用されているのはNASCARカップ・シリーズと呼ばれる最高峰カテゴリーのみ。尾形さんが参戦するエクスフィニティ・シリーズやローカルレースでは今もスチールホイールが使われている。そこでNASCARのホイールについて尾形さんにドライバー目線で語ってもらった。

「NASCARはカーレースでもっとも激しいレースだと思います。他車とぶつかることもある、またコンクリートウォールに接触するケースも希ではありません。そんな時にはホイールが曲がってしまうことも少なくないんです。エア抜けやタイヤが切れることもあり、大変危険ですし、もちろんレースは続行できません。そこでホイールには信頼性が大切です。その点、BBSのホイールはテストも含めて公開していたので信頼できるホイールだと感じています。NASCARカップ・シリーズの新規車両であるネクストジェンもより精密な車両に進化しているので、ホイールの進化がそれに合致するのは良いことだと思っています。私も2023年シーズンにはNASCARカップ・シリーズへの出場を狙って行くので、その際には新たな車両&ホイールのフィーリングを確かめて見たいと思っています」

トークショーの会場にはBBSのNASCAR用ホイールの実物が展示され、そのディティールまでを見て触れることができた。従来のスチール→アルミホイール化に加え、5穴→センターロックの変更を果たした。さらにサイズは従来の15インチから18インチ化されている。これは世界的にレーシングタイヤが18インチ化されているのに合わせた進化と言われている。さらにNASCAR用のホイール開発においてポイントとなったのは強度・剛性の高さだという。車両同士の接触が発生しやすいNASCARではホイールの破損はレースを左右する大きなポイント。そこで通常のレーシングホイールよりも高い強度で設計されたのが特徴だ。実際にホイールを見るとリムフランジ部分の厚みやスポーク裏にも肉抜きが一切無いなど、かなり強度を高めた設計であることが外見からもわかる。それだけに鍛造レーシングホイールとしては重量もあり、感覚ではあるものの会場でホイールを持ち上げるとしっかりした重量感を感じた。

最後に2022年にNASCARで日本人として初優勝を遂げた尾形さん、前年からの変化、優勝に至った理由を自己分析してもらった。

「前年は2位、3位までで優勝には届きませんでした。そこで2022年はシャーシも含めてマシンをオールリニューアルしました。さらにチームのクルーも4年目でコミュニケーションも良い状態で、マシンとチームの良い状態が合致したのだと思います」

NASCARでの初優勝で尾形さんの状況も大きく変わった。優勝後のファンとの関係性についても聞いてみた。
「優勝すると観客の反応が違うんです。歓声や拍手も大きくなって行きました。あるとき“日本語でサインして欲しい”と言わたんです。これはアメリカ文化であるNASCARに日本人ドライバーが認められたと感じてすごく感動しました」

2023年シーズンには引き続きエクスフィニティ・シリーズやローカルシリーズでの優勝を狙いつつ、NASCARの最高峰シリーズであるNASCARカップ・シリーズへの参戦を目指すという尾形さん。国内ではまだまだ馴染みの無いNASCARの日本への伝道師となる活躍ぶりが来シーズンも期待される。尾形さんのリザルトはもちろん、NASCARの新型車両に装着されるBBSのホイールにもあらためて注目したい1年になりそうだ。

This article is a sponsored article by
''.