2026年のF1は早くもシーズン前半の11戦が終了し、束の間の夏休みに入った。今シーズンのF1はレギュレーションが大幅に変更。特にパワーユニットが大きく変わり、エンジンと電動モーターの出力比が均等になるという革新的かつ超高効率な動力源となった。そのため、これまで以上にいかにエネルギーを回生し、限られた電気をどこで使うかということの重要度が増した。ただ、ドライバーたちはこれに戸惑った。また、回生するために減速するマシンと電気を使って加速するマシンの速度差が大きくなり、危険なシーンも生じた。そのため来季からはエンジンと電動モーターの出力比が微調整されることになった。
しかし現在のF1用パワーユニットは実に高効率であり、ここで開発された技術やノウハウは、間違いなく将来の市販車に活かされることだろう。この他、車体は若干ながら小型軽量化。前後のウイングは可動式になり、ストレート区間では空気抵抗を減らし、コーナリング区間では空気の力で車体を路面に押し付けるダウンフォースを生む。ホイールとタイヤもサイズが変更された。ホイールは昨年まではBBSが全チームに供給するワンメイク体制であったが、今季からは各チームがそれぞれホイールメーカーと契約する形に変更された。
そんな中フェラーリは、BBSのホイールを選び、テクニカルパートナーシップを締結した。BBSとフェラーリと言えば、その歴史は深い。BBSが初めてF1チームにホイールを供給したのは1992年。その時のパートナーがフェラーリであり、F92Aというマシンの足元をBBSのホイールが支えた。
近年のフェラーリは、なかなかタイトル争いに加わることができていない。特に昨シーズンは苦しみ、未勝利に終わった。しかし新レギュレーションとなった今季には巻き返しを誓い、意欲作SF-26を送り込んだ。特筆すべきはリヤの可動式ウイングだ。フェラーリの可動式リヤウイングは他チームとは異なり、くるりと回って上下が逆さまになる形で、その独特な動きから”マカレナウイング”の愛称で呼ばれている。日本では”くるりんぱ”と言った方がイメージしやすいかもしれない。このリヤウイングに関しては、動き方こそ異なるものの、他チームも追従した。
ドライバーは昨年に引き続き、シャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンがコンビを組む
フェラーリ勢は開幕から速さを見せた。特に小径のターボを採用したことが功を奏し、素晴らしいスタートダッシュを決めて先頭を走るというシーンも多く、先頭に躍り出た後は激しいバトルを繰り広げた。開幕戦オーストラリアGPではルクレールが3位、第2戦中国GPではハミルトンが3位、そして第3戦日本GPではルクレールがまたも3位。安定して表彰台を獲得していった。その後中東情勢が悪化したことにより、バーレーンGPとサウジアラビアGPの開催が見送られ、4月はレースが開催されないという異常事態となった。
シーズンが再開された後、ハミルトンはカナダ、モナコと2戦連続2位となったが、なかなか勝利には届かなかった。レース序盤こそ速さを見せても、一度攻略されると、その後はライバルに差をつけられてしまうという展開が続いたのだ。そんなフェラーリを後押しするため、BBSはデザインを刷新したアップデート版ホイールを用意し、第7戦バルセロナ-カタルニアGPに持ち込んだ。
ここで躍動したのが、史上最多7回のチャンピオン獲得経験者であるハミルトンである。ライバルのほとんどが2ストップ作戦を採る中、ハミルトンは3ストップ作戦を採用し、スタートからフィニッシュまで常に全力走行。爽やかにさえ映ってしまうほどの快走劇を見せた。これにはライバル勢も追いつけず、またライバルにマシントラブルもあったことがさらに後押しとなり、優勝。ハミルトンにとってこの勝利はフェラーリ加入後初、2024年のベルギーGP以来約2年ぶりの勝利となった。バルセロナ-カタルニアGPでの走りは、昨年のハミルトンとはまるで別人であり、数多くの優勝を誇った頃のようだ。昨年苦しんだ担当エンジニアとの関係も良好であり、リズムが合っているようにも感じられる。ついにフェラーリで初の勝利を手にしたハミルトンは、マシンを降りるなりピットレーンの傍らに片膝を付き、ヘルメットも脱がずに感涙に暮れた。実に感動的なシーンであった。
一方でチームメイトのルクレールは、母国戦モナコGPでクラッシュしリタイア。ハミルトンが勝ったバルセロナ-カタルニアGPでも、マシントラブルに見舞われてリタイアしたが、イギリスGPで好機が巡ってきた。先頭を逃げ、後続からはライバルが迫っていたが、そのライバルにトラブルが発生し、レース終盤にはクラッシュが発生してセーフティカーが出動。そのままチェッカーを迎えることになり、ルクレールが優勝を果たした。ルクレールにとってもこの勝利は、2024年アメリカGP以来となる2年ぶりの勝利であった。
結局シーズン前半を終えた段階で、ハミルトンは5度の表彰台を獲得、全てのレースで6位以上に入る安定した走りで、ドライバーズランキング2番手につけている。またルクレールも4回の表彰台登壇を果たしランキング4番手。チームとしてもコンストラクターズランキング2番手である。ライバルはいずれも強いが、ハミルトンもルクレールも、大逆転でのチャンピオン獲得の可能性は十分にある。またコンストラクターズチャンピオン争いは、4チームによる激戦になりそうな予感である。結末はまだ誰にも分からない。ちなみにフェラーリがチャンピオンを獲ることとなれば、ドライバーズタイトルならば2007年のキミ・ライコネン以来、コンストラクターズタイトルならば2008年以来ということになる。
F1の2026年シーズン後半戦は、8月21〜23日に開催されるオランダGPで幕を開ける。