豊富な知識と経験を持ったプロショップを紹介する【BBS × PRO SHOP】シリーズ。今回ご紹介するのは、大正10年から岐阜県に店を構える老舗中の老舗『岐陽ビーエス』。日本BBS社の設立前から第一線で業界を見続けた同店代表の宇佐見さんに、日本のホイール業界やBBSホイールの変遷を語っていただいた。

ワシマイヤー社製の鍛造ホイールに驚愕!しかし……

日本BBS社設立の1983年当時、市場での鍛造ホイールは、ドイツのフックス社やアメリカのアルコア社など、限られたメーカーのみであった。

「日本BBS社ができるとなったときに、視察として我々代理店会もワシマイヤーの小野光太郎社長らとドイツBBSに行くことになってね。当時はドイツへの直行便なんてないから、アンカレッジ経由(アメリカ・アラスカ州)でさ。そりゃもう大変だったよ」

現地では、ドイツBBS社やセラールのホイールを製造していた鋳造工場を見学。さらに、ツアーのメインとして「フランクフルトモーターショー(ドイツ国際モーターショー)」に足を運んだという。

「そこにはBMWのM1が展示されていて、足元にはドイツBBSが開発した『RS』が装着されていた。そのとき小野社長が『このホイールを日本で作る。みんなでこれを売りましょう!』って話してね」

※上写真のBMW M1の模型は、視察時にホッケンハイムサーキットにてドイツBBSから配られたもの。ホイールには『RS』が装着されている。

デザインや設計はドイツBBS。鍛造ホイールとしての量産は日本BBS社。そうして完成したのが3ピース鍛造ホイールの『RS』だ。

初代『RS(3ピース)』。現在は『SUPER-RS』に進化し、2ピース構造となっている

その後、日本BBS社から1ピース鍛造ホイールの『RG』が登場する。これには宇佐見さんも驚いたという。

「当時の主流はディッシュタイプといって、ディスクにいくつか穴が空いているようなデザインのホイールだったからね。RGは細かいメッシュデザインで、しかも鍛造の1ピース。日本BBS社開発陣の努力には脱帽したよ」

当時の主製品は、3ピースホイールの『RS』と1ピースホイールの『RG』。長年数々のホイールを見てきた宇佐見さんも唸る出来のホイールであったが、初期の売上は芳しくなかった。

その要因は、ドイツ車オーナーには有名な“BBS”も、日本車オーナーにはそこまでの知名度はなかったこと。さらに、一般的な鋳造ホイールよりも高額であり、“鍛造”の良さを理解してもらうまで時間を要したことが挙げられる。

「日本BBS・ワシマイヤーは元々車業界のメーカーではないからね。どんなに良い製品が作れても、ユーザーを納得させること、ユーザーが求めるサイズを展開することができなければ発展は難しいんだよ。だからこそユーザー・販売店と直接関わる代理店が頑張らないといけない」

宇佐見さんをはじめ各代理店は、幾度となくワシマイヤー社を訪問しては、当時技術責任者であった吉村勝則氏に市場でのサイズ展開を訴え、各販売店には「鍛造とは?」を説いてまわった。

※当時は代理店制度があり、一般的なタイヤ販売店と日本BBSに直接の取引は無く、代理店契約をしているお店が卸業も行っていた。岐陽ビーエスも代理店のひとつ。

その甲斐もあり日本市場に受け入れられたBBS鍛造ホイールは一躍人気に。なかでも『RS』は高価格にもかかわらず常時数百本のバックオーダーを抱えるほどの売れ筋商品になったという。

車業界の変化と、これからのBBSに望むこと

「ドイツBBS」、「日本BBS」、そして「BBS JAPAN」と、これまでBBSが辿ってきた道を間近で見てきた宇佐見さんに、いまの車業界の現状と、これからのBBSに望むことを伺った。

「いま車業界はEVの普及で変革のときを迎えていると思う。人気車種のバッテリーEV(BEV)化に伴い、車重は2、3割増してきていて、メルセデスのコンパクトクラスEQAですら車重は約2tもある。そうなると発進トルクがこれまで以上に必要になってくるよね。なのに、EV車のホイールは転がり抵抗を減らすために径は大きく、細いホイールになっている。車は重いうえに、リムと路面の間隔は狭いから路面の衝撃を受けやすい」

車によっては、VIA / JWL(ホイールの技術基準)の標準値を上回る車重になってきており、これまでのように簡単にホイールを交換することができなくなってきているという。

「さらに、トルクが大きくなればホイールの締結も緩みやすくなる。こうした状況を受けて、一部レクサス車ではホイールの締結が従来のナット式からボルト式に変更になったりと各メーカーでも仕様変更が起きてる。BEVを含め発進時にトルクが必要な車両については、ホイールだけでなく付属部品の強度や品質も重要になるわけだね」

つまり、各部品やパーツのサプライヤーは、高重量化するEV車に適応した製品を展開していく必要があるというわけだ。その点でいえば、2023年の東京オートサロンでBBS JAPANが発表した高重量車向けのホイール『FORTEGA』は、まさにこうした未来を見据えた商品と言えるだろう。

宇佐見さんは、こう続ける。

「BBSに関してはブランドも品質も確立されているから業界内の信頼度は高いといえる。ただ、昨今は車を取り巻く客層が幅広くなってきているから、これまで以上に多くの層に『BBSとは?』を認知してもらう必要が出てくるだろうね」

BBSの販促資料をファイリングして取ってあるという。商品に対してのストーリーはもちろん、マッチングなども熟知した同店は、まさに頼れるプロショップだ

各製品に対する知見はもちろんのこと、移り変わる業界の流れを敏感に察知し、安心安全なカーライフをお客さんに提供する同店。販売店としての長い歴史は、信頼を重ねてきた証である。

岐陽ビーエスに展示されている貴重なホイールをご紹介!

貴重なお話を伺ったあとは、同店に展示されていたホイールを見せていただいた。ここではその一部をご紹介しよう。

ドイツBBSの鋳造マルチピースホイール『RM』

ドイツBBSの鋳造1ピースホイール『RJ』

上写真はドイツBBS製の鋳造ホイール『RM』と『RJ』。これらと類似のデザインで日本BBS社からは鍛造の『RS』『RG』が販売されていた。

ドイツBBSがブガッティとライセンス契約をして製造した、ブガッティロゴ仕様のドレスアップホイール

ライセンス契約によって製造されたピニンファリーナ仕様のドレスアップホイール

こちらは当時の宣伝用写真

上はドイツBBSが欧州車メーカーとライセンス契約をして製造していたドレスアップ用ホイール。よく見ると「by BBS」の刻印があるのがわかる。

日本BBS社から1991年に登場した『RS Ⅱ OPEN』

こちらはワシマイヤー社製の『RS Ⅱ OPEN』。航空機に使われる「チタンハックボルト」を採用した鍛造ホイールである。ハックボルトとは高強度で、耐振動性、耐疲労性に優れるボルトのこと。ネジではなくリベットになっているため緩みがないのが特徴だ。

各代理店のプライベートブランド向けに製造していた1本

上のホイールは、日本BBS社がとある代理店のプライベートブランド用に設定したホイール。当時はこうした代理店向けの商品も数多くあったという。

店内には往年のホイールのほか、BBSホイールの断面見本なども展示されている

なかなか見ることのできないホイールの断面。お店に行ったらぜひ一度見ていただきたい

宇佐見さんお気に入りのホイールは車の足元に!

宇佐見さんのお気に入りのホイールは社用車のメルセデス・ベンツW211に履かせている『Racing DTM』だという。これは日本でBBSのレース活動を担っていたプロジット社から販売(製造はワシマイヤー社)されていた鍛造ホイールで、レーシングホイールそのままのデザインが特徴だ。

宇佐見さん曰く「改造車と見せたくない」とのことで、センターエンブレムは、メルセデス純正部品を加工してスリーポインテッド・スターにしている。

お店の2階にもホイールがずらり

ほかにも同店には多数のホイールが展示してあり、別の倉庫には貴重なホイールが揃っているとか。どのホイールに対しても相当の知識を誇る宇佐見さん。気になるホイールがあればぜひ話を聞いてみてほしい。

所在地岐阜県岐阜市都通5丁目11
TEL058-253-6666
営業時間9:00〜18:30
定休日日曜日
HPhttps://www.giyo-bs.com
【岐陽ビーエス】

【BBS × PRO SHOP】シリーズはこちらもチェック!