巧妙な手口! 中古車ディーラーが行った詐欺販売とは
ホイール単体での販売であれば、注意深く見ることで怪しさに気づくこともできるかもしれない。しかし、詐欺グループは巧妙な手段で消費者を騙そうとするもの。
ここからは、BBSジャパンに届いた1通の手紙から摘発に至ったケースをご紹介しよう。
北海道在住のAさんは18歳になり免許を取得。念願のマイカーを購入すべく、来る日も来る日もクルマの販売情報をチェックしていた。購入条件は憧れであるBBSのホイールを履いていること。
ほどなくしてインターネット上の中古車業者にて、条件に合うクルマを見つけ購入。納車され友達に披露したところ、それが偽物であると指摘され、初めて被害に気づいたという。
Aさん方がそれを聞き、ショップに問い合わせたところ、「当社のサイトでは『新品アルミ』としか記載していない。キャップに『BBS』とあるが、BBS風にしているだけ。勘違いしたそちらが悪い」と言われたそうだ。
サイトには本物だとは書いていない。BBSという単語も出てこない。これでは警察も詐欺罪では立件できない……。
Aさん方はBBSジャパン宛の手紙に、被害の全容と悔しさ、悪徳業者への怒り、同じような被害をこれ以上増やしたくないという想いを綴った。
手紙を受けた田中さんは、BBS本社のある富山県の高岡警察署に事情を説明。該当のショップに警察と共に踏み込んだという。
「残念ながら現場では該当車両は1台しか見つけられませんでしたが、これまで販売してきた実績も徹底的に洗い、40台ほどの車両を発見して摘発しました。ショップ側は『オークションで仕入れた時点から装着されていた』なんて言い訳をしていましたが、そんな偶然が続くわけもありませんからね」
ホイール単体で売る場合、ブランド名を出さないのは不自然だが、クルマに装着した状態であれば一つ一つの詳細を書かなくても展開できる……。
中古車をお探しの方は、くれぐれもこうした詐欺に合わないよう注意していただきたい。
偽造品と知っていて買う人もいる?
そのほとんどが騙されての購入だが、見た目が本物に近ければ偽物でもいい……と考える人も少なからずいるという。
「非常に残念ですが、時計やカバンなどと同様にパッと見で本物に見えるのなら安いほうがいい、という方もいます。ただ、そうした製品の品質は本物とはまったく違う。時計やカバンなどは偽物でも生死に関わりにくいですが、クルマのホイールは大事故に繋がり命を落とすことがあります」
BBSジャパンでは、過去に偽造品を購入し、性能テストをしたことがあるという。そこでの検証は下記の3つ。
- 回転曲げ疲労試験
ホイールに荷重を掛けて回転させネジレを発生させる。コーナリング時に問題がないかを確認 - 半径方向負荷耐久試験
荷重をかけた状態で50万回走行させる。通常走行で危険はないか確認 - 13°衝撃試験
タイヤを斜めにした状態で500〜600kgのオモリを落とす。その衝撃でホイールが割れないかを確認
「偽造品のなかには試験中にヒビが入ったり割れてしまったり、通常走行で危険を伴うような製品もありました。中にはすべてをクリアするものも無いわけではないですが、それはテストをしてみてはじめて分かるものです。正規品であれば、厳しい試験を経て展開しているため安全は担保されていますが、偽造品ではそうはいきません。事故が起きてからでは遅いんです」
メーカーがいくら対策を講じても、我々消費者の意識が伴わなければ偽造品の撲滅は不可能。もし安価にドレスアップなどを考えている人がいたら、今一度その危険性を考えてみてほしい。
BBSジャパンの偽造品対策
インターネット上のサイトを巡回し該当製品を削除する以外にも、さまざまな対策を講じているBBSジャパン。まずは、そもそも外国から偽造品が入ってこないようにする水際対策がある。
「日本の税関に、BBSの商標がついた物があったら通さずに連絡をもらえるようお願いしているほか、他国の税関にも協力を依頼し偽造品の輸出をしないようにしてもらっています」
さらに、2018年1月以降の製品には同社独自の偽造防止ホログラムシールを貼付。これは剥がそうとするとシールが破損するというもので、偽造品への再貼付はできない構造になっている。
「ただ2018年1月以前の製品には貼られていないので、シールが無い=偽造品ではありません。あくまでも近年の製品を見るときの目安として認識していただければ幸いです」
シールを導入してからというもの偽造品の流通量も半減しているとか。これからBBSホイールの購入を考えている方はぜひこのシールに注目してみてほしい。
騙されないために
最後に、偽造品購入を未然に防ぐための方法を教えていただいた。
「一番分かりやすいのは価格ですね。偽造品のほとんどが正規価格の1/4とか1/5で売られています。そんなことは流通上ありえませんので、極端に安くなっているものは、まず偽造品だと思っていただいていいと思います」
また「ホイールだけでなく、グッズ類などの偽物もあるので注意です」と田中さん。
「ロゴキャップの台座がシルバーのプラスチックになっているものや、ロゴ部分がシールになっているものなどがありますが、すべて偽物です。正規品はアクリルで作られていますが、最近ではアクリルの偽物も出回っているので一概には判断できません……。ただ、現行品であればカタログやHPなどで製品画像が公開されていますので、購入前に一度チェックしていただければと思います」
田中さんはこう続ける。
「残念ながらいくら対策を講じても、偽造品を根絶することはできません。こちらが手を打てば、向こうは新たな手を繰り出してきて、まさにイタチごっこです。ともあれ、我々も警察や行政と連携して消費者のみなさんを守るべく取り組んでまいりますので、ぜひみなさんも本記事を参考に、偽造品被害に合わないよう自衛いただければ幸いです」
もし個人売買やオークションサイトなどでの購入を考えている方は、しっかりと製品を見極めること。
偽造品かもしれない……という意識を持つことこそが、被害を未然に防ぐためにはもっとも重要なのだから。